「肺がんの生存率が低い理由」をご存知ですか? 原因・早期発見のポイントを医師に聞く
肺がんの診断や治療についても教えて!
編集部: 肺がんはどのように診断されますか? 宮澤先生: 胸部X線などでなんらかの異常や気になる所見で発見される、というケースがほとんどです。そこで、さらなるレントゲン検査やCTスキャンなどの画像検査で詳細を確認し、異常が見つかった場合は、より詳しい検査として気管支鏡検査や肺生検がおこなわれ、がん細胞の有無を確認するという流れが一般的です。 編集部: 肺がんが発見された場合、どのように治療が選択されるのでしょうか? 宮澤先生: 先ほど解説した気管支鏡検査や肺生検などにより、肺がんの種類や進行度が特定されます。また、検査により転移の有無も確認できるので、それらを踏まえて適切な治療の選択肢が提案され、患者さんのニーズやご希望などを聞きながら治療方針が決められていきます。 編集部: 例えばどのような治療法がありますか? 宮澤先生: 別のところからの転移ではなく、原発性の肺がんというところで述べると、主な治療法としては「手術療法」「放射線療法」「化学療法」「免疫療法」があります。早期の非小細胞肺がんでは手術が有効ですが、進行がんや小細胞肺がんでは化学療法や放射線療法が中心となります。最近では、がん細胞の特定の分子を標的とする「分子標的薬」や「免疫チェックポイント阻害薬」などの新しい治療法も導入されています。 編集部: 抗がん剤と分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の違いを教えてください。 宮澤先生: まず抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑える薬です。分子標的薬は、簡単に言うとがん細胞を増やす分子に働きかけて、がん細胞の増殖を妨げる薬で、免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞によってあまり働かなくなっている免疫機能を元に戻すことによって、もともと体に備わっている免疫の働きでがん細胞を攻撃させる薬です。
なぜ肺がんの生存率が低いのか 生存率を上げるためにできることは?
編集部: 肺がんの生存率は、ほかのがんと比べて低いと聞きました。その理由は何なのでしょう? 宮澤先生: 理由としてはいくつかあります。下記の要因が組み合わさり、肺がんはほかのがんと比べて生存率が上がりにくい状況を生んでいます。 ①早期発見の難しさ 先ほども述べたように肺がんは初期症状がほとんどないため、発見時には既に進行していることがほとんどです。 ②治療の困難さ 進行した肺がんの場合、一般的に手術の適応はなく、治療の選択肢が内科的治療に限られます。 ③転移の頻度が高い 肺がんはほかの臓器に転移しやすい性質があります。転移があると治療がより困難となり、生存率が低下します。 ④診断技術の限界 ほかのがんに比べて、肺がんの早期診断に特化した技術や手法がまだ限られています。乳がんのマンモグラフィや大腸がんの内視鏡検査のような効果的なスクリーニング方法が十分に普及していないため、早期診断が難しいのです。 ⑤年齢層 肺がんは高齢者に多くみられます。高齢者は肺がんだけでなく、ほかの健康問題を抱えていることが多く、これが治療の効果や耐性に影響を与えるため、生存率が低くなる要因となります。 編集部: 肺がんの生存率を上げるためにはどうしたら良いでしょうか? 宮澤先生: 早期発見、早期治療ができれば生存率は大きくアップします。早期発見のためには、症状が出る前の定期的ながん検診が重要になります。 編集部: やはり、早期発見が大事なのですね。 宮澤先生: そうですね。しかし、肺がんの治療も年々進歩しており、すでに肺がんと診断された患者さんにも明るい兆しが見えています。遺伝子変異の検出が簡便になってきていることで分子標的治療薬に繋げやすくなってきていますし、遺伝子変異が陰性の場合でも免疫治療が奏功する可能性があり、奏功した場合は進行期でも大幅な改善が期待できます。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 宮澤先生: 一言で「肺がん」と言っても、進行状況や病状、社会的環境(ご家族や仕事、お住まいの地域)など置かれている状況は一人ひとり違います。自身の命に対する考え方も一人ひとり違うはずです。先述した通り、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤など肺がん治療の選択肢も増えつつあります。おまかせで治療を受けるのではなく、患者さんご自身も積極的に勉強し、専門家である医師から解説してもらい、自らの価値観や状況にあった肺がん治療を納得して受けていただきたいと思います。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]