「授業中は黒衣に徹し、よけいなことは言わない」 生徒のやる気を引き出す、中高一貫校の「探究授業」に密着
「KP法とは『紙芝居プレゼンテーション』の略で、A4サイズの紙を複数枚使って、それぞれの紙に伝えたい内容をキーワードの形で短く書き、その用紙を貼りながら説明していく方法です。スライド(パワーポイント)のようにPCや電気がなくても、紙とペンがあればできますし、作成段階からみんなでワイワイと盛り上がることができます。発表するときも、紙の貼る位置を考えたり、裏返したりしながら紙をどう使ってどう見せるか、工夫のしどころが多いのもいいですね」 授業は情報収集と発表資料準備に2コマを使い、3コマめの時間から発表する。河口先生は、授業以外でもやりとりすることと、発表時間は4~6分で、班のメンバー全員が話すこと、引用元は明記すること、そしてプレゼンの最後に自分たちの考えを示すことを伝えた以外は、とくに声がけをすることもなく、むしろ存在を消すかのごとく、生徒にまかせている。 生徒はというと、KP法で発表を行うのは初めてだそうだが、それぞれ楽しそうに話し、作業している。 「対話に参加できていない人がいないかどうかを気にかけるほかは、私は何もしません。生徒の気が散らないよう話している内容に耳をすませることもしないし、よけいなことも言わない」 探究授業では黒衣に徹しているという河口先生が大切にしているのが、対話の練習から始めること。20年ほど前から実践し、その効果を強く確信している。対話の練習で、生徒のやる気と能力を引き出すことができたからだ。 「探究」のポイント 探究に必要な「やる気」と「スキル」を身につけてもらうために生徒が自然に「自己開示」しやすい環境作りを大切にしている。これは教科授業でテキストの読み込みや問題演習をする際も同様。 1 4~6人のグループで対話型に 探究は、生徒の主体的な参加から始まる。教師から一方的に学ぶのではなく、生徒個人・グループ・クラスの順に疑問や感想を共有し、教師のサポートで議論を深めていく。 2 対話の練習から始めて話しやすい雰囲気作り 生徒は意見の発信や話し合いに慣れていない。毎回、対話(おしゃべり)から始め、自分のことをそれぞれ話すことで互いの距離が縮まり、意見も伝えやすくなる。 3 発表者の意見にまずは共感 自己紹介、グループ内の対話、グループごとの発表、いずれにおいても、否定や批判ではなく共感から始めるのが基本。そこから「楽しさ」や「やる気」が生まれる。 4 教師はあくまで支援に徹する 教師から学んでわかったことについて話しあうのではなく、まず生徒たちで話すことによってわかりたくなるというモチベーションを目指す。教師はその支援をするだけ。