CO2からポリエステルを作る日本発世界唯一の技術、その革新性と今後の課題
この技術を高付加価値の最終製品にすることを目指したのがゴールドウインだ。ゴールドウインは23年、プロジェクトオーナーになり、CO2由来のポリエステルの製造に着手。フィンランドの再生可能燃料メーカーのネステ(NESTE)、三菱商事、韓国の化学メーカーのSKジオセントリック(SK GEOCENTRIC)、タイの石油化学メーカーのインドラマ・ベンチャーズ(INDORAMA VENTURES)、インドの化学メーカーのインド・グリコール(INDIA GLYCOLS)、総合エンジニアリング企業の千代田化工建設とコンソーシアムを組んだ。
ゴールドウインは長期ビジョン“PLAY EARTH”を掲げ、「グリーンデザインの推進」「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」の3つを柱に環境配慮型素材の積極的活用、修理やリセールなどに取り組んできた。西野美加ザ・ノース・フェイス事業部ザ・ノース・フェイス アパレル事業部長は「次のステップはサプライチェーンを持続可能な構造に変えていくこと」だという。スパイバーと人工タンパク質繊維“ブリュードプロテイン”開発もその一環だ。「TNFはアウトドア製品を提供していて自然が身近にあり、製品を提供する側もされる側も自然を遊び場にしている。そのため、自然環境に配慮した素材を積極的に活用することで、ニュートラルにしていきたい。そのために新素材開発に力を入れており、CO2排出量削減はもちろん、サプライチェーンの変革や循環型社会に向けて取り組んでいる。また、製品を介してお客さまとも環境保全に向けて取り組んでいきたいと考えている。そして、常に取り組む全てのプロジェクトに関してそれが本当に環境にいいのか、アパレル産業の課題解決に向かっているのかを疑いながら、よりよい方法を模索している。その結果、業界をリードする存在でありたいと考えている」と西野部長は語る。
今回、テレフタル酸は一部の製造にCO2由来を、その他はリニューアブル原料とバイオ原料由来のテレフタル酸を用いた。「TNF」の西野部長は「今回の製品化で用いたCO2由来の原料は微量ではあるが、初めの1歩として大きな役割を果たしたと考えている。CO2由来の原料の使用量を増やすには時間がかかるかもしれないが、挑戦したい」と話す。機能性や品質に関してはバージンポリエステルと同じだという。「今後は定番のカットソーなどでリサイクルポリエステルやオーガニックコットンと並ぶ環境配慮素材として活用していきたい」。