学校断熱ワークショップで教室の暑すぎ・寒すぎ問題が解消! 生徒がDIYで「勉強に集中できる」効果実感、電気使用量も70%減 エネルギーまちづくり社・竹内昌義さん
役所や公共施設、オフィスビルにも断熱を
2025年、すべての新築住宅では断熱等級4が義務化されます。「さらに2030年までのなるべく早い時期までに、断熱等級5をデフォルトにしようという動きがあり、6まで必要なのではないかとされているのに、既存の集合住宅や公共施設、営業施設は大きな遅れをとっています」と竹内さん。次はどこに目を向けたらいいのでしょうか。 「これまで学校断熱の話をしてきましたが、学校で過ごす時間は朝から夕方まで。夏休みや冬休みもある。もっと長い時間稼働する役所の建物を断熱すれば、エネルギー削減と快適性の向上が実感できて、断熱効果を訴求できるのでは」 例えば、2021年に新築された北海道ニセコ町の庁舎は、屋根や壁に20cm超の高性能断熱材を入れ、窓はすべて木製サッシのトリプルガラスを採用。冬はマイナス20℃にもなる環境でありながら、暖房費は半減。エネルギー効率と快適性は、旧庁舎とは比べものにならないほどだといいます。
「ニセコ町の庁舎は窓の比率が高くないのが特徴的です。ヨーロッパのビルも窓の面積が小さい。アメリカ・ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルは窓ガラスをすべてトリプルガラスに改修し、エネルギー使用量が低減、改修費は3年で回収できています。東京都心にあるような全面一枚ガラスのオフィスビルは、デザイン性とメンテナンスを重視して建てられていて、エネルギー効率まで考えられていませんよね」 住宅でも、光熱費の元が取れるかという話に終始していたときはなかなか進まなかった断熱化ですが、ヒートショックが防げて、快適性が上がって、エネルギーも減るということが周知されてきた経緯があります。 新築住宅だけでなく、学校、公共施設、オフィスビルなど、非住宅建築の断熱強化が脱炭素化をめざすうえで必要不可欠。まずは自治体など公共から進めて、民間に移していくことが求められている、と竹内さんはいいます。
幸福度と再エネ普及率には相関がある!?
海外の断熱事情はどうでしょうか? 「建物の断熱は海外では当たり前で、建物を新しく建てる=二酸化炭素を排出するとして問題視する動きがあるほど。二酸化炭素を出さないためにはどうしたらいいかが明確で、つくって壊すのではなく、今ある建物をリノベーションしていこうという考え方です」 太陽光や水力、バイオマスといった再生可能エネルギーの普及率も日本は遅れをとっていて、G7のうち25%を切るのはアメリカ、フランス、日本だけ。そんな再エネ比率と世界幸福度ランキングで発表される“幸福度”には、実は相関関係があるのでは?と竹内さんは着目します。
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