最強武装組織ヒズボラ vs. イスラエル...戦争になればイランや中東以外からも戦闘員が参戦する
緩衝地帯の設置が急務
ヒズボラは殉教を信仰の証しとするイラン主導の武装組織ネットワーク「抵抗の枢軸」の要。7月28日に就任したイランのマスード・ペゼシュキアン新大統領も、ヒズボラへの堅い支持を明言した。 イスラエルと全面戦争になれば、イランとその代理勢力から数万の戦闘員がヒズボラに加わるだろう。中東以外の地域からもイスラム教徒が参戦するだろう。アフガニスタンのタリバンは、既に戦闘員を送ると表明している。 イスラエル、アメリカおよびその多くの同盟国はヒズボラをテロ組織と見なしてきた。だがアラブ連盟はアラブおよびイスラム世界におけるその人気の高まりを受けヒズボラをテロ組織に指定しないことを6月29日に決定した。 イスラエルはもはや中東の支配的勢力と目されてはいない。ガザでの戦闘、ヒズボラやイエメンのフーシ派やイランとの交戦はイスラエルの脆弱性を露呈させた。 レバノンの首都ベイルートをガザと同じように焼き尽くす兵力を、イスラエルは今も保持しているかもしれない。だがわずかでも余力を残してヒズボラとの戦いに片を付けるには、アメリカの直接介入が欠かせない。 とはいえ秋に大統領選を控え、イスラエルの安全を守ると主張するアメリカも、レバノンでの対ヒズボラ戦を支援するのは非常に難しい。 アメリカが積極的にイスラエルを支援すれば、ロシア、中国、北朝鮮は待ってましたとばかりにイランとヒズボラに加勢するだろう。 イスラエル、ヒズボラおよび双方の支持者は外交を通じて合意を取り付け、イスラエル・レバノン国境の両側に緩衝地帯を設ける必要がある。そのためにイスラエルとハマスはまずガザ停戦と人質の解放に合意し、パレスチナ問題の恒久的解決の礎を築かなければならない。 現時点でネタニヤフはこれを拒否している。ネタニヤフは汚職疑惑で係争中の身。ガザ侵攻が終結すれば政権を追われ、裁判で有罪になるかもしれないと恐れているのだ。 武力衝突と外部の介入が平和と安定をもたらすどころか問題を悪化させることを、中東の歴史は幾度となく示してきた。中東が一触即発の危機にある今、求められるのは冷静な判断だ。 アミン・サイカル(オーストラリア国立大学名誉教授、アラブ・イスラム学) The Conversation