最強武装組織ヒズボラ vs. イスラエル...戦争になればイランや中東以外からも戦闘員が参戦する
地域戦争を阻止するにはガザ停戦と人質解放が必要だが、ネタニヤフはこれを拒否。既にタリバンも「戦闘員を送る」と表明しており、中東は一触即発の危機にある
中東が地域戦争の危機に瀕している。イスラエルとレバノンのシーア派組織ヒズボラの衝突が、極めて危険なレベルにエスカレートしたためだ。アメリカ政府は両者を譲歩させようと外交努力を重ねているが、成果は上がらない。 【動画】イスラエルの主力戦車「メルカバ」の特殊設計や対戦車ミサイル防護システムを見よ 戦争を回避するにはイスラエルとヒズボラ、双方の支持者を巻き込んで大がかりな合意を取り付けるのが急務だ。 ヒズボラとその支持者を勢いづかせたのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のパレスチナ自治区ガザへの対応だった。 ガザに侵攻した際、ネタニヤフはイスラム組織ハマスの殲滅と人質解放を目標に掲げた。だがどちらも達成できずに孤立し、その支配力は衰えている。戦争の終結についても戦後のガザ統治についてもビジョンを持たずに無差別攻撃を繰り広げた結果、ネタニヤフの地位は揺らぎ、国際社会でのイスラエルの立場も危うくなった。
10万の戦闘員と最新兵器
今や国民の大半が退陣を求めるネタニヤフは、閣内の強硬派およびイスラエル国防軍(IDF)指導部の支持により辛うじて首相の地位にしがみついている。支持層の超正統派ユダヤ教徒からも見放され、建国以来の盟友アメリカとの信頼関係も揺らいだ。 IDFの将校たちは弾薬不足と兵士の疲弊に懸念を表し、ヒズボラ対応に注力できるようにハマスとの停戦を受け入れてほしいと首相に訴えた。 だがネタニヤフは強硬姿勢を崩さない。6月18日には、ガザ戦争を終わらせヒズボラとの戦いに軸足を移すのに必要な弾薬の供給を渋っていると、ジョー・バイデン米政権に言いがかりを付けた。 ヒズボラがイスラエルにとって厄介な存在なのは確かだ。ネタニヤフは7月24日に米議会の上下両院合同会議で演説。ヒズボラおよび支援国のイランと戦うことはイスラエルのみならずアメリカの利益だと強調し、次のように述べた。 「(レバノンと国境を接する)イスラエル北部では8万の市民が家を追われ、自国内で事実上の難民となっている。彼らを故郷に帰すことに、われわれは全力を尽くす。そしてこれを外交的に成し遂げることを望んでいる。だがはっきりさせておく。国境の安全を回復し市民を故郷に帰すために必要とあらば、イスラエルはどんなことでも実行する」 1980年代前半にヒズボラが政治・民兵組織として台頭して以来、イスラエルはその弱体化や撲滅を図ってきた。しかし2006年のレバノン侵攻をはじめ、試みはことごとく失敗。イスラエルと戦って生き延びるたび、ヒズボラは中東で影響力を拡大した。イランと、ハマスなどその同盟組織も影響力を増した。 現在のヒズボラは世界最強の準国家的武装組織だ。伝えられるところによれば百戦錬磨の戦闘員を10万人も擁し、最新鋭のミサイルやドローンを含む幅広い武器をそろえており、その組織力、また兵站における同盟組織との協力体制には目を見張るものがある。