「改憲」肯定派が多数という調査結果 「9条が自民党を勝たせてきた」政治学者語る
──さかのぼると、9条改正反対がずっと優勢だったわけではないのですね。 「国民は、報道機関が批判的な報道を多く出しているときには、同じように政府に不信を示します。ところが、問題意識は一過性なんです。たとえば2015年に制定された集団的自衛権を認める安保法制は当初、国民の間でも『違憲』という見方が強かった。朝日の調査では、2015年9月の時点で違憲説が51%で合憲は22%となっています。ところがその後世論は急速に変化し、2016年3~4月には合憲説が38%になり、2017年3~4月には違憲説が40%に減って合憲説が41%とわずかに上回っている。あれだけ大論争があったにもかかわらず、わずか1年半でこうなっているんです。朝日はその後この調査をやっていないようですが、今やったら完全に合憲説が多数に逆転している可能性が高いです」 ──なぜでしょうか。 「ちょっと時間が経って、ワイドショーなどで扱わなくなると、国民はそんな論点があったことすら忘れていく。政府は、新政策が憲法違反かもしれないと批判されても、それを顧みずに解釈で乗り越える。すると、国民もそのうち、新しい安保政策をOKと認めてしまうのです」
──では、国民が求める安全保障とは何でしょうか。 「『あるべき安全保障』の具体的イメージを持っている国民はほとんどいないでしょう。多くの国民が思っているのは、現状から大きく変えてほしくないということだけです。自衛隊の大幅拡充も、大幅削減も望んでいない。現在の安定した状態が続けばそれでいいんです。現実に採られている安保政策が憲法に沿っているか、という点はほとんど意識されていないと思います。その結果として、憲法は一字一句変わっていないにもかかわらず、憲法制定時と今日とで日本の安全保障政策の実態はまったく異なったものとなってしまっています」
非立憲主義が約半数という調査結果
2021年1月、境家氏らが行ったオンライン調査がある(回答者総数4000人、居住地、性別、年齢は現実の人口比と等しくなるよう割り付けされた)。「あなたが考える憲法のあり方はどちらのイメージが強いか」という問いに、AとBの選択肢が用意された。A「憲法はあくまで国の理想の姿を示すものであるから、政府は、現実の必要に応じて、憲法の文言にとらわれず柔軟に政策決定すべきである」。B「憲法は国家権力を制限する具体的ルールであるから、政府は、現実の必要があるとしても、憲法の文言上許されない政策を採るべきではない」。法の支配を重視する立憲主義の立場からは、Bを選択すべきだ。だが、結果は、非立憲主義的なA寄りの立場をとる人が多数を占めていた。境家氏は「衝撃的だった」と振り返る。