米半導体輸出規制で始まった「輸出管理戦争」時代は企業に何を求めるか
経済安全保障戦略の実効性は、企業と政府の連携の深さによっても左右される[次世代半導体の国産化に向け、ベルギーの研究開発機関と協力の覚書を交わしたRapidusの小池淳義社長(中央)。右は西村康稔経済産業相=2022年12月6日](経済産業省HPより)
日本にとって半導体は特別な意味を持つ製品である。1980年代には日本の半導体産業は世界市場の50%のシェアを握り、当時、激しく展開していた日米貿易摩擦においても、日本の半導体は不公正な政府支出によって支援を受けていると批判され、1986年から10年間、日米半導体協定が実施された。 日本においては、それ以降半導体産業の衰退が進み、現在では世界市場において10%以下のシェアしか持たない状況にある。半導体産業の衰退を回復すべく、日本政府は2021年から半導体産業の再活性化を目指して大きく動き出している。こうした動きを後押ししたのが、Covid-19に伴う半導体供給不足の問題に直面し、様々な経済活動に支障が生じたことだ。そして2022年から始まるロシアのウクライナに対する侵略により、半導体のサプライチェーンの内製化を進める重要性も明らかにされた。 ただ、日本において、半導体産業の活性化は叫ばれていても、その問題は安全保障上の懸念、すなわち中国の軍事的台頭と連動して議論されることはなかった。日本において、中国の軍事的台頭は、尖閣諸島をめぐるグレーゾーンにおける圧力であったり、台湾有事をめぐる問題として認識されてきた。そして、そうした中国の軍事的な能力の向上については、中国の技術発展の「結果」として受け止めること、いわば不可避的なものと捉える理解が大半であった。
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鈴木一人