シード返り咲きへ 中西直人がドライバーイップスを克服「理論をイチから勉強しました」
<パナソニックオープン 事前情報◇17日◇有馬ロイヤルゴルフクラブ(兵庫県)◇7100ヤード・パー72> 中西直人の超低空スティンガーショット【連続写真】 男子ツアーの人気者、中西直人が19日に開幕する「パナソニックオープン」に出場する。中西は2019年に賞金ランキング64位で初シードを獲得。コロナ渦で統合された2020-21年シーズンはキャリアハイとなる同46位でシードを維持したが、翌22年に同81位でシードを落としてから苦しい時間を過ごしている。 今季は下部の「ABEMAツアー」が主戦場で、レギュラーツアーは3試合に出場して予選通過は1度だけ。主催者推薦で出場する今大会への意気込みを聞いた。 「シードを落とした22年からドライバーイップスっぽくなってしまって、クラブが上がらなくなった」と告白。シードを喪失して試合間隔が空いてしまったことで、「ドキドキするというか、ワクワクし過ぎるのでゴルフにならない」と、症状は良くならなかった。 そんな状況を克服すべく、今年からプロコーチの堀尾研仁氏と契約。堀尾氏は2000年代には田島創志や高橋竜彦の初優勝に貢献、16年には塚田陽亮の初優勝をサポートしている。最近も小木曽喬(たかし)のスイング改造に取り組み、今年の「ハナ銀行 インビテーショナル」で初優勝させた実績を持つ。 「最低月1回は行く」と自宅のある関西から東京浜松町にある堀尾氏のスタジオに通い、中西のショットの調子は徐々に上向いてきている。「今までは悪くなるとどうしても感覚に頼ってしまっていた。堀尾さんに『感覚だけではやっていけない時代になっている。しっかり勉強し直して、鎧(よろい)を身に着けて戦える準備をしよう』言われて、理論をイチから勉強しました。理論の言い方を変えると鎧になるんです」。 そんな2人の出会いや関係性が面白い。中西がABEMAツアーで戦っていた18年、ある試合で堀尾氏がインターネット中継の解説を務めていた。実況に「中西選手って分かりますか」と聞かれ、「分からないですね。覚えておきます」と堀尾氏は答えた。その悔しさもあり中西はスイング改造に、より力を入れることに。「次の年にレギュラーツアーでシードを獲って、『堀尾さんのおかげで頑張れました。ありがとうございました』と初めて会ったときに挨拶しました」。そこから食事に行くなど交流が始まった。 コーチと選手の関係になったのは昨年から。20~22年までは堀尾氏とも仲の良い植村啓太氏が中西のコーチで、昨年は植村氏と堀尾氏が共同で中西のスイングを見ていた。2人のコーチの意見が違うこともあり、今年に入って「一回、堀尾さんで行ってみる」と中西が植村氏に伝えると、「気にしないよ。直人が良くなれば誰が教えているとかどうでもいいよ」と快諾。「啓太さんとは何でも話す兄貴以上に兄貴なんですよ。僕は啓太さんが大好きだし、これからも関係性が一生変わることはない。必ず成功して啓太さんに恩返ししたい」と中西は思っている。 また、仲良くしている後輩たちの存在も大きい。平田憲聖は今年に入って3勝を挙げて賞金ランキングトップを走り、金子駆大(こうた)と小斉平優和(こさいひら・ゆうわ)はたびたび優勝争いに絡んで、すでに賞金シードに確定ランプが点いている。「活躍する選手とゴルフをすることが増えて、メンタル的にもゴルフ的にもいい感じです」と語る。 今大会のあとにはABEMAツアーの「エリートグリップチャレンジ」、レギュラーツアーで大会ホストを務める「ACNチャンピオンシップ」と、地元関西での試合が続き、いよいよ来季のレギュラーツアー出場権をかけた戦い「セカンドQT」が控える。ここから一戦一戦の重みが増していく。 「いい感じで来ているし、本当に楽しみでしょうがないです。やるべきことはやっているし、結果として上位に入れるかもしれないし、普通に予選落ちするかもしれない。いい意味で期待しすぎず、どう転がるか。もちろんQTが大事なんですけど、まずは目の前の試合に一打一打やるのが目標です」。持ち前の明るい笑顔がはじけた。