"科学者ランナー" 憧れの舞台に初出場 JAXA・月崎さん(静岡市出身) 故郷への感謝を胸に【市町対抗駅伝】
30日に静岡市内で行われる第25回県市町対抗駅伝競走大会(静岡陸上競技協会、静岡新聞社・静岡放送主催)で、異色のランナーが誕生する。静岡市静岡の宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所准教授の月崎竜童さん=東京都、静岡市葵区出身=は今年40歳の節目を迎え、「いつか走りたいと思っていた」と憧れの舞台への挑戦を決意。40歳以上の6区で代表の座を勝ち取った。宇宙研究の最前線で活躍する"科学者ランナー"が生まれ育った故郷への感謝の思いを胸にたすきをつなぐ。 同区瀬名で育ち、「当時はまだ開発が進んでいなくてきれいに見えた」夜空を見上げる少年だった。1998年のしし座流星群を見て宇宙に関わる仕事を志し、東大大学院修了後の2013年にJAXAに採用された。小惑星探査機「はやぶさ2」搭載のイオンエンジン開発に携わった。現在は26年に小惑星に接近、通過予定のはやぶさ2から送られてくるデータを分析している。 高1だった00年の第1回大会で補助員として携わった。県庁前でスタートの盛り上がりを見て以来、ランナーとして出場することが夢になった。40歳以上の6区に照準を定め、2年ほど前から意識してきた。今年9月の選考会で40代以上トップで出場を決めた。 小学生から始めたサッカーで鍛えた脚力で中3の時、地元のマラソン大会で優勝した。「サッカー部で一番速い友人に逆転勝ちできた」ことで自信を付け、静岡高に進学して陸上に打ち込むように。大学、大学院まで競技を続けた。 今も市民ランナーとして走っているのは目立った成績を残せなかったから。高校最後のレースはスタート後に他の選手に靴を踏まれて失速し実力を発揮できず、学生時代の目標だった関東学生対校選手権への出場も果たせず、「成仏できない無念さを払拭できる場を探していた」 社会人になってからは仕事や4歳の長男、1歳の次男の育児の合間を縫って練習。10キロ離れた職場まで走って通うなど月間最大350キロほどをこなしている。体脂肪率も5%に絞り「調子は社会人になってから今がピーク」と自信をのぞかせる。 仕事で世界各地を訪れ滞在する間、地域の住民と一緒にランニングした経験から「静岡の市民ランナーは世界最高レベル」と指摘する。「そんな方々に挑戦できるのが楽しみ。持てる力を最大限に発揮する」と意欲を示した。
静岡新聞社