水に浮かべば有罪! 45キロ以下なら魔女! 中世にはびこった魔女を見分ける理不尽な判定法
「魔女探索人」ホプキンズ
しかしこの種の話題については、イングランド、スコットランドの方が有名である。 ここには先述のホプキンズという魔女探索人がいて、いぼや黒子を「魔女の乳首」と称し、それに針を刺して痛みを感じなければ、魔女として告発した。この人物は、1644年に出身地のサフォークからエセックス、サセックス、ノーフォークへ魔女探索の旅に出た。 かれは助手とともに町へあらわれ、当地の裁判官に魔女を訴えようとしている人がいないかどうか打診をした。たちまち20人程度の女性がかれの前へ連れてこられ、服を脱がせて針の検査が行われた。こうしてかれらは、魔女探しの遍歴を重ねたのである。 ホプキンズの申し立てによれば、魔女を見つけても、ひとり当たりわずか「20シリング」の報酬を手にしているにすぎないとのことであったが、実際にかれはそれ以上の多額のお金を入手し、およそ200人もの魔女を嗅ぎ出して裁判所へ送り、そのうち68名を処刑場へ連行させていた。 同種の針刺し人たちは、スコットランドにも需要があり、かれらがイングランドから流入してきた。ホプキンズは各地を流しながら魔女を見つけて、ひとり当たり最高3ポンドで当局へ引き渡していた。かれは後にいかさまを見破られて、絞首刑に処せられた。 しかしこのような針刺し人は、地域の人びとにとっては魔女を告発するために必要とされていたことがわかる。当時は放浪芸人、いかさま医師、遍歴職人、ネズミ取り男などが徘徊していた時代であって、針刺し業も特別な職業ではなかったのである。 (『拷問と処刑の西洋史』より) * * * いよいよ裁判は最終フェーズへ! 魔女の「裁判&処刑」については「スピーディーかつ効率的に! 魔女裁判のコスト&ベネフィットは厳密にマネジメントされていた」をお読みください! また「収監」については「「魔女」と疑われた者はどのような監獄生活を送っていたのか 絶望的な「魔女の塔」のリアル」を、「尋問&拷問」については「魔女はこうして落とす! 「魔女狩り将軍」の尋問マニュアル&テクニック集の驚くべき中身とは」を、それぞれご覧ください!
浜本 隆志(関西大学名誉教授)