異端の原点と黎明期のスクランブラー──同系車とは異なり、オフロード性能を本気で追求したCL72 【ライター中村友彦の旧車雑感 Vol.7】
スクランブラーからトレールバイクへ
もっとも、ホンダが本気でオフロード性能を追求したスクランブラーはCL72と兄弟車のCL77(305cc)のみで、1960年代中盤以降のCLシリーズは、当時の他メーカーが販売していたスクランブラーと同様に、オフロードテイストのオンロード車になっていく。つまりCL72は、日本製スクランブラーの原点でありながら、ライバルや後継車とは一線を画する異端のモデルでもあったのだ。 ──【1966 CL125】CL72/77と比較すると、CB125をベースとするCL125の専用設計パーツは控えめ。ただし理想のエンジンフィーリングを求めて、キャブレターはツイン→シングル化。 ──【1968 YAMAHA DT-1】ワークスモトクロッサーYX-26の技術を転用していたものの、DT-1はオンとオフが過不足なく楽しめる、フレンドリーなトレールバイクだった。乾燥重量はCL72より40kgほど軽い112kg。 ちなみに、CL72に端を発する第一次スクランブラーブームは、1970年代初頭に終焉を迎えた。そのきっかけになったのは、1968年にデビューして世界中で爆発的な人気を獲得したヤマハDT-1だ。2スト単気筒エンジンを含めて、トレールバイクとしてすべてを専用設計したDT-1の登場で、オンロードバイクの派生機種だったスクランブラーは、徐々に存在意義を失うことになったのである。
CB450D[1967]
CLシリーズとは趣が異なる、左右出しアップマフラーが目を引くCB450Dは、1967年の1年間しか販売されなかったレア車。このモデルが誕生したきっかけは、北米市場におけるCB450K0の販売不振で、主な開発目的は悪路走破性の向上ではなく、ルックスの刷新だった。ごく少数の完成車も存在したが、ディーラーで取り付けを行うキットパーツとしての販売がメインだった模様。
CL450[1968]
主要市場のアメリカでは1968年、日本では1970年から発売が始まったCL450は、CB450K1をベースにして開発。アップマフラーはCLシリーズの流儀を踏襲した左側2本出しで、前輪は18→19インチ化(後輪は18インチのまま)。容量を12.5→9ℓに縮小したガソリンタンクは新規開発で、ブリッジ付きワイドハンドルはCB450Dと同形状。最低地上高は、CB450K1+15mmの155mm。