被害者への賠償金は「殺人事件で13.3%、強盗殺人で1.2%、傷害致死で16%」しか支払われていない…なぜ民事判決文は紙切れ同然になってしまっているのか
作業報奨金と賠償金
某日。水原は損害賠償を求める民事裁判で原告(被害者や被害者遺族)が勝訴しても、大半の被告(加害者)が支払おうとする気もないこと、その財もないこと、刑務所の「作業報奨金」だけではとても払っていけないことも承知しており、そのことについて思うことを書き送ってきた。 民事の支払いの国の立て替えはやはり財源の問題で難しいのですね。報奨金の底上げについてはどうなのでしょうか。もちろん、底上げされても支払いは微々たるものですが、その支払いをするという行為も大事な気がします。 その行為を通して謝罪の意思表示をするとともに、贖罪意識は保たれ、あるいは高まり、また自身の戒めになります。あくまで自己満足で、加害者側の視点ですが。報奨金が上がり、支払いできる環境が整備されれば支払いをする者も増え、贖罪意識も少しは高まるのではないでしょうか。 高額な医療費や一家の大黒柱を失い、つらく苦しい思いをされている方への支払いが少しでも増えればとも思います。 日弁連が2018年におこなった調査によると、加害者に賠償を求めて民事裁判で賠償金額が確定したケースでは、殺人事件では金額のうち13.3パーセント、強盗殺人では1.2パーセント、傷害致死で16パーセントしか、支払われていないことが明らかになった。私の実感とも一致する。 私は、意図的に支払いを拒否する者を何人も取材してきた。民事訴訟の損害賠償金の支払い命令(判決)は紙切れと同じで、強制力はないと悪知恵をつけている加害者が多いからだろうか。 納得がいかない賠償金は払う必要がないなどと入れ知恵している刑事専門弁護士がいることも加害者から聞いたことがあるが、「法や正義の番人」として、そんな弁護士はごく少数だと思いたい。 その上、支払い義務には10年の時効があり、10年目に再び被害者は自腹で裁判を起こし、支払い期限を延長しなくてはならない。もちろん、実際に支払い能力そのものがない者も大勢いる。ちなみに犯罪などの不法行為で生じた賠償金(債務)は自己破産で免除してもらうことはできない非免責債務である。