作物はちゃんと育つ? 採算は?「田んぼソーラー」発電の課題
田んぼや畑の上に太陽光パネルを設置して発電する「ソーラーシェアリング」の技術開発が進んでいます。大規模な工事の必要がなく、今月、長野県上田市で開かれたソーラーシェアリング見学・検討会でも実用化へ向けた可能性が紹介されました。一方で、あまりに身近な発電システムのため、「そんな簡単な構造で可能なの?」「日陰になったら作物は育たないのでは?」「パネルは風で飛ばないの?」といった疑問も沸いてきます。見学・検討会に提出された詳細データから、その答えと今後の課題をまとめてみました。 【動画】農業と両立「田んぼソーラー発電」見学会で期待の声
太陽光パネルは生育の邪魔にならないの?
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)とは、田畑の敷地の上に小型の太陽光パネルを敷き詰める形で架設して発電する方法。太陽光パネルは農業機械の使用に支障のない高さに設置し、その下で農作業を行うため、発電と農業を両立できるといいます。また、太陽光発電には広大な面積が必要だという難点を解消できるとしています。 見学・検討会では、ソーラーシェアリングを考案したCHO研究所代表の長島彬(あきら)さん、NPO法人上田市民エネルギーの理事でIT関係の会社を経営しながら田んぼ発電を実践している同市の合原(ごうはら)亮一さん、千葉県を中心に発電に取り組んでいる東(ひがし)光弘・市民エネルギーちば合同会社代表らが、講師としてこの技術を紹介しました。 長島さん、合原さん、東さんの3人は実際にソーラーシェアリングの実践と研究を並行して進めているため豊富なデータを持っています。共通しているのは「ソーラーシェアリングは、たまたま田んぼや畑を発電に利用しようというのではなく、水田や畑の作物にとっても発電施設は歓迎すべき環境を作り出す」との考え方。このため農業を継続していくことがソーラーシェアリングの前提になるとしています。 太陽光パネルは植物の生育の邪魔にならないのでしょうか。考案者の長島さんは「多くの作物にとって太陽光は過剰であり、水分を蒸散して体温を下げている。また一定の強さ以上の光は光合成の増大にほとんど貢献できない。光合成量が上昇してほぼ一定に安定する時点を『光飽和点』と呼び、それ以上の余った光線から電力を得るのがソーラーシェアリングの考え方」と訴えます。 例えば、稲の場合は日なたの5分の1の木漏れ日状態の光に相当する2万ルクスあれば80%の光合成量が得られる。レタスなどは人口の照明でも生産できることから、作物によっては太陽光が強すぎることが分かると指摘。こうした作物の上に太陽光パネルを適切な大きさと配置でセットしてやれば、作物への余分な直射日光をカットしつつ発電もできる。作物と発電の双方にとってプラスの発電システムになる――というのです。 作物には直射日光をカットした光を平均的に供給しなければならないため、作物の上に張りめぐらした太陽光パネルは長さ1メートル余、幅は40センチほどの短冊型の小型パネルとするのが特徴。パネルの間を空けて設置するため、常に太陽光がすき間から照射し、パネルの部分は影になります。太陽の動きとともに影の部分も移動して、作物は万遍なく適切な量の光を受けるとしています。