宇宙ごみ除去・アストロスケール「下方修正」の背景、株式市場からの評価と期待を両立する難しさ
まだ確固たる実績がない、市場創造型のこうした宇宙関連ベンチャーへの市場評価は、会社が語る「未来予想図」をどれだけ信じられるかという、いわば期待値で左右される。 今回のアストロスケールの下方修正では、株式市場にコミットしていた数字からネガティブな方向に乖離したことで投資家はセンシティブに反応。大引け後に下方修正を発表した12月13日の金曜日の終値819円に対し、週明け12月16日の株価は一時は127円安の692円まで下落した。
■今後は保守的な出し方を検討 アナリスト説明会の中で、松山氏は「(収益計上の)タイミングがずれると影響も大きいので、今後はもう少し保守的に、決まっている契約をベースに業績予想を出しつつ、固まってきた段階から上方修正していくやり方も検討していく」とも語った。 さりながら、アストロスケールのような宇宙ベンチャーは株式市場からの期待を高める必要があることも事実だ。事業の特性上、先行投資の額は大きく、時間もかかる。おまけに成功するかはやってみないとわからない。事業を継続、拡大していくための資金を資本市場から調達したい。
そのためにはなるべく株価を高く維持しなければならないが、すぐに利益を出すことが難しい以上、ある程度は期待を膨らませるしかない。だが、期待を高めれば、実現のハードルは上がり、その通りにいかなかった際の反動が大きくなる。だからといって、保守的な開示姿勢が期待値を押し下げることになれば、成長に必要な資金調達の足かせになりうる。 新たなプロジェクトの調査契約受注の発表もあり、足下の株価は下方修正の発表前の水準まで戻っている。とはいえ、未知の領域に挑む以上、今後も紆余曲折は十分に起こりうる。
いかに株式市場への説明責任を果たしていくか。業績開示の最適なあり方を探る試行錯誤が続きそうだ。
奥田 貫 :東洋経済 記者