宇宙ごみ除去・アストロスケール「下方修正」の背景、株式市場からの評価と期待を両立する難しさ
■半年程度のズレは誤算の範囲 とはいえ、宇宙関連の事業は「半年程度のズレは誤差の範囲」と言われるほど進展の見極めが難しい世界。現にバッファを見ていたにもかかわらず、2025年4月期のプロジェクト収益への計上見込み額が大きく減少した。 未契約案件を業績予想に織り込むべきではないという見方もできるが、松山CFOは「こういうものを織り込んでいかないと、(予定通りに進んだ場合にプロジェクト収益の額が)後で大きくぶれてしまうということもあると思い、入れた形で計画を提示していた」と説明。岡田社長は「他に競合がなく、われわれにしかできない事業であることも契約よりも先に計画の中に見込んでいた理由の1つだ」と話した。
説明通りなら、LEXI-Pは単に計上が遅れただけで受注は確実ということになる。また、Porject Aは同様の案件内容で他国での受注実績があることから契約獲得の確度は高いと見ているようだ。ならば、今回の下方修正は、額こそ大きいものの本質的には問題でなく、ただの期ずれであり、何も心配することはないのだろうか。 もっとも、両プロジェクトに限らず、宇宙関連は事業の特性上、実際にどこまで順調であるのか、外部からは判断がしづらい。アストロスケールが目指すデブリ除去などは商業サービス化に向けた開発や実証の途上であり、世界でも前例がない。衛星を使う事業者に対するデブリ化防止などの義務を課す国際的なルールもまだ確立されていない。
受注活動を行っている案件の契約が締結できたとして、今後もマイルストーンを順調にクリアできるのか。技術的なハードルを越えて、商業サービスを開始できるのか。デブリ関連の市場がいつ本格的に立ち上がり、需要が大きく伸びるのか。合理的に予測するのは宇宙の専門家でも困難だろう。 アストロスケールのほか、月面輸送サービスの実現を目指すispace、小型SAR衛星の開発や運用を手掛けるQPS研究所やSynspectiveと、2023、2024年は宇宙関連のベンチャーが相次いで東証グロース市場に上場している。