宇宙ごみ除去・アストロスケール「下方修正」の背景、株式市場からの評価と期待を両立する難しさ
2025年4月期は、未受注の一部プロジェクトにおける研究開発費の先行があること、政府からの収入だけでは総コストを賄えず、一部自己負担となった別プロジェクトで32億円の受注損失引当金が発生することなどから、もともと赤字が拡大する想定が示されていた。 ■2つの新規プロジェクトの契約が遅延 誤算だったのは、民間顧客の衛星の寿命延長サービスを担う衛星初号機「LEXI-P」と、日本政府が顧客で、衛星の寿命延長サービスの「Project A」という2つの新規プロジェクトの契約が遅延したことだ。これらでプロジェクト収益の下方修正額の大半となる約50億円の下押し影響になるという。
説明会で岡田社長は「LEXI-Pは顧客が民間で実衛星へのサービスとなり、R&Dプロジェクトではない。そうした点で検討しなければならない事項に時間がかかっているが、かなり密な詰めの議論をしており進捗はしている」と強調した。 2つのプロジェクトとも従来予想よりは進捗が遅れているものの、今期第4四半期(2025年2月~4月)から貢献する前提で下方修正後のプロジェクト収益予想に織り込んでいるという。 6月の上場に先立って示されていた事業計画では、2025年4月期にLEXI-Pが大きく収益に貢献するとの見通しが記されていた。
説明会では、あるアナリストが「公開価格の850円は従来の計画に基づいて成立していた価格のはずだ」と指摘したうえで、「LEXI-Pについては、そもそも未契約のもの。いったいどういう形で(収益計上の)予想の中に計測していたのか」と質した。 最高財務責任者(CFO)の松山宜弘氏は「LEXI-Pは昨年、タームシート(法的拘束力のない条件概要書)の締結をしている。金額もうたわれており、期限もある。それを参照して織り込んでいる。あとは顧客との契約交渉の進展を考え、タイミングのバッファも考慮して事業計画に入れている」と答えた。