ガンバ逆転Vの可能性を高めた長谷川采配
しかし、この日の大一番は今野と遠藤保仁の日本代表コンビをボランチに据え、得点力のある阿部浩之と大森を2列目に配置する従来のボックス型だった。長谷川監督はナビスコカップ決勝を終えた段階で「本来の形で浦和戦に臨む」と決めていたという。15日に行われたサンフレッチェとの練習試合も、レッズの関係者が偵察に訪れている中で、隠すことなくボックス型でキックオフに臨んでいる。 「そこは迷うことなく、ですね。相手をどうこうよりも、自分たちのサッカーができるかどうか。守備で難しい部分はありましたけど、自分たちが一番慣れ親しんだシステムで戦ったほうが、選手たちも納得してこの試合に臨めると思ったので」 サンフレッチェと違ってレッズが前半を自重してくることとに加えて、ナビスコカップ決勝では前半に2点を先制されて苦境に立たされたことも、指揮官に普段着のサッカーを貫く決断をさせたのだろう。 それでも、4バックで守るガンバに対し、攻めるときに5トップになるレッズはサイドで必然的に主導権を握る。右から平川忠亮、左から宇賀神友弥と5トップの「両翼」を務めるワイドの選手に幾度となく鋭いクロスを入れられた。しかしながら、すべてが想定内だったと長谷川監督は明かす。 「何かを捨てないとね。やはりリスクを冒さないと」 攻撃的なスタイルを貫いた指揮官の信念を、同じ可変システムを採用するサンフレッチェとレッズの差を挙げながら今野が補足する。 「サンフレッチェは結構むきになってボールをつないでくるから、(アンカーを置いた)あのシステムではまるときははまる。でも、浦和はポゼッションするタイプの選手が揃っていないから、プレッシャーをかけたらけっこう蹴ってくれる。李忠成あたりが競って、そのこぼれ球を拾えばチャンスになるというサッカーでくるからね。だからオレらは、とにかくバランスを崩さないようにしました」 指揮官と選手の意思が統一された戦い方も、我慢比べの末に勝ち点3を手にする最高の結果を導いたのだろう。今野が自信満々の口調で続ける。 「ナビスコカップを獲得した勢いもあるかもしれないけど、それだけじゃない。オレらはいま本当に実力がある。本当の力があるからこそ、今日のような超アウェーの厳しい環境の中での試合を勝ちに持っていけた。オレらは(決勝点を取った)カウンターもあるし、遅攻もあるし、サイド攻撃もあるし、スルーパスもある。状況によって攻撃を自由自在に操れるし、交代で入った選手も個性を持っている。そういう個性を生かすようにオレらはボールを供給していくだけなので、ものすごくやりやすい」