「家族3人が筋ジストロフィー」プロ卓球選手・吉田雅己が初めて明かす絆と覚悟
筋ジストロフィーの家族が3人
実は、北海道に戻った一番の理由は、実家の家族の世話をするためです。 父親の病気が進行しつつあり、去年、病院から家に帰ってきた際、今まで以上にサポートをしないといけない状況になりました。 筋ジストロフィーという病気です。 ――遺伝的な異常によって、筋肉が徐々に萎縮して運動機能が低下する、国指定の難病ですね。 はい、進行性なので良くなることはないです。昨年父がコロナに罹り、生死の境を彷徨ってからは歩くことも難しくなってしまいました。 あと、自分には兄が二人いるんですが、兄二人も父と同じ病気を患っています。 ――5人家族の中で3人、筋ジストロフィーに罹っているんですか。 先に発症したのは父より兄二人のほうです。 自分が中学から北海道を離れてすぐ、兄二人の筋力・握力が弱い、少し知能が低いなどの症状から検査に行って、診断を受けました。
「母にとっては自分が支え」
――お母さんがずっと、お父さんやお兄さんたちのお世話をしてきたんですね。 中学から自分はずっと北海道を離れたので、20年近く母だけがサポートしてきました。 それでも、全国大会にはどこでも必ず母とおじいちゃんが来てくれました。関係者の間ではちょっと有名なくらいに(笑)。 自分も、試合前に家族を見つけて“頑張ってくるね”と、アイコンタクトするのがルーティンになっていました。 ――家族は、吉田選手の力にもなっていたんですね。 はい。ただ、父の病気が進行してくると、やっぱり母親からしても、自分が支えで。 今まで自分はやりたい卓球だけをずっとやってきて母親に迷惑をかけてきたので、今年からは自分も実家近くに住み、家族を支えながら選手としてもしっかり活動したいと思っています。 ――お母さんは何か言ってましたか。 母親は今までも、自分が言ったことはすべて、何も言わず賛成してくれるんです。 ただ、今回北海道に戻ると伝えたとき、“正直、帰ってきてくれてよかった”と言うのを聞いて、いま決断して良かったと思いました。 ――突っ込んだ質問ですが、遺伝性の病気であれば、吉田選手自身にそれを疑ったことはないんですか。 それはあんまり思わなかったですね。怪我をしてしまうときも、ハードワークなど明確に原因があったので。 ただ、自分が結婚する前に、北海道に帰ってお世話になっている病院に行って検査をして、自分自身がその因子を持っていないことをクリアにはしました。 自分はずっと早めに子どもが欲しいと思っていましたが、絶対に妻や妻の両親も不安な部分はあるだろうと思ったので。 検査前に妻が“もしあったとしたとしても全然大丈夫だよ”と言ってくれていたことは心強く、本当に感謝しています。