2度目の弾劾採決目前、「非常戒厳は統治行為」と主張し与党議員を激怒させた韓国・尹錫悦大統領、一か八かの賭けに
■ 非常戒厳宣布は「統治行為」か否か その状況をよく理解しているからだろう。尹大統領は談話文で内乱罪が成立しない理由について次のように主張した。 1、小規模の兵力を国会に投入した理由は、戒厳宣言放送を見た国会関係者や市民が大挙集まることに備えて秩序維持をするためであり、国会を解散させたり機能を麻痺させようとするものではない。 2、国会関係者の国会出入りを阻まないようにしたので、国会議員と途方もなく多くの人波が国会の庭と本館、本会議場に入り戒厳解除案件審議も進行された。 3、大統領の非常戒厳宣言権の行使は、赦免権の行使、外交権の行使といった司法審査の対象にならない『統治行為』である。 韓国刑法には内乱罪の成立要件として「国憲紊乱を目的とする暴動」と規定し、国憲紊乱は「国家機関を弾圧により転覆、またはその権能行使を不可能にすること」と定義している。 また暴動とは「少なくとも一地方の安寧と秩序を破壊するほどの大規模でなければならない」と定義している。 尹大統領の談話文は、「12・3戒厳は刑法で定めた内乱罪に該当しない」と主張するものだ。 また、尹大統領は戒厳令宣布は統治行為の一部とする点も強調した。「大統領の統治行為は司法判断の対象にならない」ということは韓国の法に明示されており、いくつかの判例もある。 国民の力の尹相現(ユン・サンヒョン)議員は11日の国会での発言で、「金大中大統領の不法対北朝鮮送金事件」を取り上げ、「高度な統治行為だからといって処罰しなかった」と主張した。 この事件は、2002年の南北首脳会談のために、金大中政権が現代峨山(アサン)を通じて4億5000万ドルを北朝鮮に送金した事件で、鄭夢憲(チョン・モンホン)現代グループ会長を自殺に追い込み、朴智元(パク・チウォン)元文化部長官には懲役12年の刑が言い渡されるなど、関係者全員が有罪判決を受けたが、金大中大統領は「統治行為」と認定され、裁判対象にならなかった。 尹相現議員はこの点を強調しながら、「1997年の最高裁判例を見れば、非常戒厳は高度の政治行為、統治行為と見ている」という主張も付け加えた。 内乱罪は尹大統領の弾劾の主な理由でもあり、憲法裁判所での弾劾案審査の核心争点となる。もし、憲法裁判所で内乱罪が成立しないと判断すれば、弾劾案は「棄却」され、尹大統領は生き返ることができる。韓国メディアは、「弾劾審判が始まれば尹大統領が憲法裁判所に出席して直接弁論をし、生中継を要請することも考慮している」と報道した。 崖っぷちに追い込まれた尹大統領が最後の賭けに出ようとしている。
李 正宣