「JTB」が“旅行会社”じゃなくなった!?常識にとらわれない新戦略とは
常識を超える挑戦で新たな旅~コロナ禍から復活の立役者
〇JTBの挑戦2~観光客の数はそのまま、混雑が消えた謎の滝 熊本支店の中村亮介が案内してくれたのは熊本・阿蘇山のほど近くにある小国町の絶景スポット「鍋ヶ滝」。豊富な水量は神々しく、滝の裏側まで散策できる、あらゆるところから大自然を感じられる場所だ。ところが、あまりの人気のため問題が起きていた。 「コロナ前で年間20万人以上。地形の問題で大型バスが接近できないので渋滞がひどく、自分が住民だったらたまらない。『観光客、来ないで』と思ってしまうでしょう」(中村) 大混雑の状態だった「鍋ヶ滝」。それを解消した立役者が、JTBが開発した混雑を緩和できる予約システム「チケットHUB」だ。混雑する週末などは、「チケットHUB」で事前に予約し、発行されたバーコードをかざさなければ入場できない仕組みだ。これにより客が集中していた時間を分散化。全体の観光客数は減らさずに混雑を防ぐことに成功したという。 「渋滞しなくても、お金も地域にどんどんもたらされています」(中村) 住民の悩みを解決できた小国町も「課題として町が抱えていたオーバーツーリズムが解消され、JTBさんに大変ありがたく思っています」(小国町役場商工観光係・新家龍太郎さん)と感謝している。 今までにないさまざまな取り組みで観光地を活性化しているJTBを率いるのは、4年前、かつてない厳しい状況で社長を任された山北栄二郎(61)だ。 「コロナの間は今までにない状況だったので、しっかり立て直すのがメインでした」 2020年、コロナが世界中を襲い、旅行に関するビジネスが一瞬で消滅。人の移動がなくなるという最悪のタイミングで社長に就任。赤字から這い上がり、売り上げ1兆円台に回復させることに成功した。 〇JTBの挑戦3~島に人を呼び込むハイテクサービス 瀬戸内海に浮かぶ小豆島はオリーブの生産量日本一、島内には魅力的なスポットがいくつもある。 そこに今年オープンしたのは、オリーブオイルのアロマを使い、瀬戸内海の絶景を見ながら癒しの滞在ができる施設「千年オリーブテラスfor your wellness The STAY」。敷地内にあるのは樹齢1000年のオリーブの木。その貴重な実から抽出したオリーブオイル「ジ・オリーヴオイル ミレニアム」(11万円)という商品も売っているが、「まだ知ってもらえてない、もっと来てほしいです」(「小豆島ヘルシーランド」柳生敏宏社長)と言う。 2023年度の観光客数は91.6万人(コロナ前の9割)で、宿泊者はコロナ前の6割。 そんな小豆島を最新技術でブレイクさせようというのがエリアソリューション事業部の高島達朗。JTBはAIを手がけるベンチャー「エイトノット」と組んで、交通が不便な小豆島を便利に回れるよう自動運転船を整備しようとしているのだ。 「目的地をタブレットから選択するだけでAIが自動的に安全なルートをひいてくれます」(「エイトノット」堂谷香菜子さん) 「今まで陸上だと1時間かかっていたところを、海上だと15分。いままでの陸上交通のストレスを解消したいと思います」(高島) 試乗のために訪れていた小豆島町の大江正彦町長は「JTBさんが乗り出してくれて大歓迎。うれしかったです」と言う。 続いて高島がやってきたのは小豆島が誇る絶景スポット「寒霞渓」。準備しているのがドローンだ。ドローンのベンチャーと組んで観光地にあったサービスを開発している。 「自動でドローンを離発着させて、『寒霞渓』のすばらしい景色と自分を動画に収めて感動を味わってもらいたい」(「fly」船津宏樹CEO) 観光客のためにドローンが自動で撮影。スマホに絶景映像を転送してくれるサービスだ。