戸籍がないまま生きる「無戸籍者」を減らすために…2022年12月におこなわれた「民法の改正」について専門家が解説
杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの新ラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。 4月28日(日)の放送テーマは、「知っていますか? 無戸籍を解消するための新しいルール」。法務省民事局の齊藤恒久(さいとう・つねひさ)さんをゲストにお迎えして、戸籍の仕組み、無戸籍を解消するための新しいルールについて伺いました。
◆“戸籍がない子ども”が生まれてしまう理由
戸籍とは、人がいつ誰の子として生まれ、いつ誰と結婚し、いつ亡くなったかなどの親族的身分関係を登録し、その人が日本人であることを証明する公の記録です。住民票をはじめ、さまざまな行政手続は原則として戸籍に基づいておこなわれます。乳児の予防接種や乳幼児検診のお知らせ、小学校・中学校への入学の通知といったものも、戸籍に基づいて保護者へ送られます。 一方で、戸籍がないと日本人であることの証明ができないため、多くのデメリットが生じることになります。 <デメリットの一例> ・パスポートが作れない ・一部の資格取得ができない ・親の遺産が相続できない しかしながら、日本には戸籍がないまま生きている、いわゆる「無戸籍者」と呼ばれる人たちが約800名います(法務省調べ)。「戸籍に関する法律では、子どもが生まれると、出生の届出をすることが義務付けられていますが、何らかの理由によって手続きをしない方がいると、戸籍に記載されない『無戸籍者』が存在してしまうことになります」と齊藤さん。 その出生の届出が“できない理由”とは何でしょうか? その原因の1つとして“従来の民法の規定”が挙げられます。民法には“生まれた子の父が誰であるか”を法律上早く確定させて子の利益を図るために、子どもが生まれた時期によって「誰が父親か」を推定する規定があります。 これまでの民法では、役所で婚姻届が受理された日から200日より後に生まれた子は「その婚姻による夫の子」と推定され、その夫婦の戸籍に入ることとなっていました。 また、離婚などにより婚姻を解消した場合、離婚届が受理された日から300日以内に生まれた子は「前の夫の子」と推定されるため、戸籍には前の夫が父親として記載されることになります。父が確定すると、子は父に対して養育費の支払いを求めることができたり、父の相続人になったりできます。 ところが、この規定によって出生届を“出せない”“出したくない”という女性が一定数存在していると言われており、その背景には「離婚後の300日ルール」が関係しているとされています。 前述の通り、離婚して300日以内に子どもが生まれた場合、戸籍には前の夫が父親として記載されることになります。しかしながら、離婚するまでの経緯は人それぞれで、例えば、夫の暴力(DV)から逃れるために、長らく別居してから離婚するケースも考えられます。そして、別居中に新しいパートナーができ、そのあいだに子どもを身ごもるケースもあるかもしれません。 しかし、離婚成立から300日以内にその子が生まれた場合、戸籍には前の夫が父親であると記載されることになり、そうした背景から、出生届の提出をためらってしまう人もいるようです。 この事実に、村上は「離婚がスムーズにできないケースはDVだけではないと思うので、出生届を出せずに悩んでいる方は、私が想像するよりも多いかもしれないですね」と慮ります。