戸籍がないまま生きる「無戸籍者」を減らすために…2022年12月におこなわれた「民法の改正」について専門家が解説
◆無戸籍問題の解消のために民法を一部改定
無戸籍となる問題の解消を目指すため、2022年12月に民法の一部が改正され、誰が父親かを決めるためのルールが見直されました。その1つが“誰が父親かを推定する規定の見直し”です。 今回の改正で、婚姻届が受理された日から200日以内に生まれた子であっても、その婚姻における夫の子と推定されることになりました。なお「離婚後300日以内に生まれた子は前の夫の子とする」というルール自体は、子の利益を図るために必要なので変更はありません。ただし“母親が再婚した後に生まれた子”に対しては、離婚後300日以内に生まれた場合であっても“再婚後の夫の子”と推定されることになりました。これにより、出生届を提出するのをためらう人の減少が予想されます。 その一方で、やっとの思いで離婚できたとしても、再婚しない限りは前の夫の子だと見なされる問題があります。そのようなケースでは、裁判所での手続を通じて“この子の父親ではない”と申し立てることができるのですが、これまでの民法では、これを夫側だけがおこなうことができたため、母親側が手続をしたい場合は、離婚した元夫に「『自分はこの子の父親ではない』という申し立てを裁判所にしてほしい」と頼む必要がありました。 そして、仮に依頼できたとしても夫が協力的ではないと、この制度が利用しにくいという指摘がありました。そこで、今回の改正によって、父だけでなく、母や子も、父と子の関係を否定する訴えを裁判所に申し立てることができるようになりました。 この見直しにより、前の夫の子として扱われることを避けるために出生届を出さず、結果として無戸籍となってしまう人々を減らすことができます。ただし、この規定が適用されるのは「2024年4月1日以降」に生まれた子どもが対象です。 したがって、それより前に生まれた子どもには改正前の規定が適用されますが、2024年4月1日から1年間(2025年3月31日まで)に限り、2024年4月1日より前に出生した子どもであっても、子または母が、父と子の関係を否定する訴えを裁判所に申し立てることができます。ちなみに、4月1日以降に生まれた子どもと母の場合、父と子の関係を否定する訴えができる期限は“出生から3年間”です。 出生届のことで悩んでいたり、戸籍がなくて生きづらい思いをしている方は、無戸籍に関する相談窓口や最寄りの法務局などに相談しましょう。法務局では、無戸籍の方に寄り添った支援をしています。法務省のサイト「無戸籍でお困りの方へ」をご確認ください。最後に齊藤さんは「もし、友人や知人に出生届や戸籍のことで困っている人がいれば、今回の内容をぜひ教えてあげてください」と呼びかけました。
番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「無戸籍を解消するための新しいルール」について復習します。村上は“期間限定”を注目ポイントに挙げ、「2024年4月1日より前に生まれて(無国籍で)悩んでいる方は、2025年3月31日までは裁判所で手続することができます!」と強調します。 一方、杉浦が挙げたポイントは“無戸籍相談窓口や最寄りの法務局に相談”です。「今回は結構難しい内容だったので、詳しく知りたい方は、無戸籍相談窓口や最寄りの法務局に相談するのが一番だと思います」とコメントしました。 (TOKYO FM「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」4月28日(日)放送より)