42歳で独身、親が心配し「年100万円」近く振り込んでくれます。親も70代なので「いらない」と言っても「相続税の対策になるから」と言われます。贈与税も払っていないのですが、大丈夫なのでしょうか?
家計が苦しいときに親が金銭的な援助をしてくれるのは、とてもありがたい一方で、金額が大きいと税金が気になるかもしれません。しかし、目線を変えれば、親から子どもへの援助が、場合によっては相続時の節税につながっているケースもあります。 本記事では、まず贈与税の基礎控除を説明し、毎年100万円近い援助を受けた際の贈与税がどうなるか解説します。また、相続税の基礎控除についても触れ、援助する親から見たメリットや、贈与税や相続税の注意点も解説しますので参考にしてください。 ▼子ども名義の口座に「月3万円」ずつ入金してるけど、将来口座を渡すときに「贈与税」はかかるの? 非課税にすることは可能?
贈与税と贈与税の基礎控除
ある人が別の人から財産を得る「贈与」には、財産を受け取った人に対して「贈与税」が課税されます。親から子どもへの贈与であっても、日常の生活費など常識的な金額を超えた援助は、贈与税の課税対象です。 贈与税の課税方式には、生前の贈与額を合計し相続時に相続財産に加算する「相続時精算課税」もありますが、通常は「暦年課税」で税額が計算されます。暦年課税は毎年1月1日から12月31日の贈与財産を課税対象とした年単位の課税方式です。 暦年課税で算出される贈与税には、図表1のとおり年間110万円の基礎控除があります。そのため、贈与を受けた金額が年間110万円以下なら贈与税は課税されず、税務署への申告も不要です。つまり、今回のように子どもが親から毎年100万円近い援助を受けていたとしても110万円には及ばないため、贈与税はかからないことになります。 図表1
※扶養義務者相互間の生活費または教育費に充てるための受贈財産など 財務省 贈与税に関する資料
毎年の贈与は相続対策にもなるのか?
一方、毎年100万円近い援助をする親から見たときに、税制上のメリットはあるのでしょうか。 今回の例は、70代の親から40代の子どもへの贈与です。親の年齢を考えると相続税対策が必要なのかもしれませんが、実は相続と贈与には深い関連性があります。 なぜなら、親が生きている間に財産を相続人である子どもに贈与すれば、その分相続財産が減り、相続税の課税対象は小さくなるからです。つまり、親が相続人である子どもに対して行う贈与は、単なる贈与ではなく「生前贈与」と捉えることが可能です。 相続税にも基礎控除があり、金額は「3000万円+法定相続人の数×600万円」です。仮に相続人が子ども2人なら、基礎控除額は3000万円+600万円×2人=4200万円となります。 もし、相続財産の総額が6000万円だった場合、シンプルに計算すると基礎控除との差額1800万円には相続税が課税されます。 しかし、生前に子どもへ贈与することで、相続税の基礎控除を超えていた金額を減らすことが可能です。つまり、毎年110万円以下の贈与であれば、贈与税がかからないだけでなく、結果的に相続税の節税にもつながります。