伊東純也選手が相手女性の“不起訴”に納得できず検察審査会に申し立て…「勝率は1割」でも“厳罰”にこだわる理由
サッカー日本代表の伊東純也選手(仏1部=スタッド・ランス)が、性的暴行を受けたとして自身を告訴した女性2人を虚偽告訴罪で告訴し、不起訴となった件で、不起訴処分は不服として、大阪第二検察審査会に審査を申し立てた(8月23日付)。 検察審査会の流れ 検察審査会は検察官が事件を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)を審査する仕組み。検察審査員は選挙権を有する国民からクジで11人が選ばれ、検察庁から取り寄せた事件記録などから、国民の視点で審査を行う。
検察審査会で起訴に覆るのはわずか1割
令和2年(2020年)版の犯罪白書によると、検察審査会法施行後の昭和24年(1949年)から令和元年(2019年)までで「合計で延べ17万7405人の処理がされ、延べ1万8592人(10.5%)について起訴相当又は不起訴不当の議決がされている」という。つまり、検察審査会における「勝率」は、約1割ということになる。 刑事事件の不起訴率が約6割(犯罪白書)で推移している中で、検察審査会は国民の目から審判を仰ぐ仕組みといえるが、伊東選手側に勝算はあるのか。刑事事件に詳しい、荒木謙人弁護士に見通しを解説してもらった。
伊東選手のケースにおける“勝算”は?
ーー不起訴処分の確定から新たな証拠などがない中で、検察の判断を国民が審査する検察審査会。その後の起訴率は1割程度ですが、今回のケースで女性側の不起訴が覆り、起訴となる可能性はあるのでしょうか。 荒木弁護士:今後、検察審査会で審査がされると、最終的には①起訴をすべきである(起訴相当)②さらに詳しく捜査をすべきである(不起訴不当)③不起訴処分は相当である(不起訴相当)という3つのいずれかの議決がされることになります。 ①起訴相当または②不起訴不当のいずれかの議決となった場合、検察官は、事件を再検討することになりますが、一度不起訴となっている以上、今後起訴となる可能性はかなり低いと考えられます。
争点は「一緒にいたときのやり取りの証明」だが…
ーー女性側に対する不起訴処分が覆るとすれば、どのあたりがポイントになりそうでしょうか。 荒木弁護士:虚偽告訴罪は、①刑事または懲戒の処分を受けさせる目的で②虚偽の告訴、告発を③故意に行ったことという要件が必要とされます。 今回は、①は明らかですが、②虚偽の告訴、告発であったと認定できるか否かは、大きなポイントになります。すなわち、女性側の告訴、告発が虚偽であると認定されるためには、伊東選手と女性が一緒にいた際の真実はどうだったかについて、確定的に判断できなければなりません。 しかし、実際のところ一緒にいる際にどのようなやり取りがあったのかについて、事実が確定的に判断できない場合には、真偽不明として扱わざるを得ません。 そうすると、女性側が主張していることは虚偽とまでは認定できませんので、この点のハードルが大きいと考えられます。 ーー伊東選手側としては、不起訴処分により濡れ衣を晴らしたといえますが、それに満足せず、女性側に対し、虚偽告訴罪での刑事処罰を求めることはどのような意図がありそうでしょうか。 荒木弁護士:報道によれば、伊東選手は女性側に対して民事訴訟も提起しているとのことですが、嫌疑がかけられていた犯罪についての不起訴処分、損害賠償を求める民事訴訟、相手方に刑事処罰を与えることを目的とした刑事手続きは、それぞれ別のものです。 伊東選手としては、自身が不起訴処分を獲得するだけにとどまらず、女性側に対して金銭的な賠償を求めることに加えて、女性側に刑事罰を与えることにより、自らの正当性を世間に示す狙いがあると考えられます。