1300人の社員を抱える企業が注目するパデルの可能性。日本代表・冨中隆史が実践するデュアルキャリアのススメ
逆境を乗り切ってきた「負けず嫌い」精神
――2つのことを両立することで大変だった時期や、逆境に陥った時期はありますか? 冨中:まさに今かもしれないです(笑)。これまでは仕事でもパデルでも、いかに自分がうまくアウトプットするか、ということだけを考えていたのですが、仕事ではマネージャーのポジションになったので、後輩をどういうふうに成長させてあげるかを考えながら、クライアントへのアウトプットの質も担保しないといけません。パデルは今月に全日本選手権、2月にはアジア大会があるので、そこに向けて正念場を迎えています。今はそういう変化が重なっている時なので本当に忙しくなっています。 ――普段どのようなタイムスケジュールで生活されているのですか? 冨中:朝9時に出社して、日中は基本的にオフィスで仕事をしています。夜8時くらいから練習したりジムに行ったりして、家に帰ってからまた1、2時間仕事して、12時とか1時ぐらいには寝ています。忙しいですが、充実していますよ。野球をやっていた学生時代も、平日は学校に行って、夜帰ってからランニングやバッティングをして、土日はチームの練習に行っていましたから。その時から考えると、状況はあまり変わっていないのかなと(笑)。学生時代に学業とスポーツを両立した経験が生きていると思います。 ――大学受験や両立など、難局を乗り越えるときに大切にしてきたことはありますか? 冨中:何ごとにも負けず嫌いなところはありますね。実は受験で一度、東大に落ちているんですよ。でも、2回目は絶対落ちたら嫌だと思って、めちゃめちゃ勉強をしました。パデルでは今はアジア大会に向けて練習していますけど、日本は団体戦でアジアナンバーワンになったことがないので、「今回は絶対に1位になるぞ!」と思って取り組んでいます。
デュアルキャリアのすすめ
――日本代表としてデュアルキャリアを実践されている冨中選手から、その良さを改めてお聞かせいただけますか? 冨中:僕の場合は仕事とスポーツですが、スポーツは趣味の延長で、自分のやりたいことを突き詰めていますし、仕事は生活の糧でありながらも楽しさや充実感があります。仕事で体を休めて、パデルで精神を休めるというオン・オフの切り替えをしながら、どちらも全力で取り組むことで毎日は充実しています。一つのことに集中するのももちろんありだと思いますが、両方に全力で取り組むことで、達成感ややりがいも大きくなると思います。 ――将来的にも、今と同じようなスタイルで仕事とスポーツを続けていきたいと考えていますか? 冨中:そうですね。今の仕事は続けながら、いずれは指導者としてパデルの普及や育成に携わりたいと思っています。パデルで世界のトップを走るスペインとかアルゼンチンに比べると、日本はまだまだ劣る状況です。パデルが日本に入ってきてまだ10年くらいなので、50、60年の歴史があるスペインやアルゼンチンにすぐに追いつくのは難しいと思いますが、今のジュニア世代の子たちが、今後そういうトップクラスの国に追いついていくことができたら私も幸せですね。 ――後進の選手たちの育成は、どのような指導をされているのですか? 冨中:今は月に2、3回、日曜日にコーチをさせていただいているのですが、体系立って教えてあげる機会はまだそこまで多くはないんです。ただ、その中でも自分なりの指導を模索しながら、プレーで示したり、背中を見せることは意識しています。 ――文武両道を実践されていた方は、指導者になった時に学業で論理的に考える力や、説明するスキルが生きて「天職」と言われる方もいますが、その点はいかがですか? 冨中:そうですね。論理的に伝えることは自分の強みでもあると思っているので、そういうスキルを生かして、いずれは指導者としても成長していきたいと思っています。