江戸時代後期の彫り物師「中井権次一統」について学ぶ 夜久野の公民館で
江戸期から大正にかけて丹波一円で社寺などに龍の彫り物を多く納めた彫刻家集団、中井権次一統について学ぶ「ふるさと講座夜久野学」がこのほど、龍の欄間が伝わる京都府福知山市夜久野町額田の寺院、東光寺で開かれた。夜久野地域公民館(大本夏代館長)の事業で、定員の約40人が訪れ、暑さを忘れて聴き入った。 講師を務めたのは郷土史家で市文化財保護審議会委員の大槻伸さん。市職員時代に夜久野町史編纂室長を務めていて、地元の歴史に詳しい。 テーマとなったのは、現丹波市柏原町を拠点に代々中井権次を襲名した彫刻師一族。豊臣秀吉、徳川家康に重用された大工を祖として、中井家四代目の言次から彫刻師となっている。権次を名乗りだしたのは六代目から。九代まで続いた。大槻さんは「彫刻師としての祖となった言次を敬って権次を名乗り始めたのではないか」と推察した。 歴代権次と弟子たちの一統(グループ)は丹波・丹後・但馬地方で活躍し、各地に優れた作品を残した。権次作と分かるものだけでも200点を超えるという。 福知山にも多く残り、大槻さんは大原神社拝殿(三和町大原)、長安寺薬師堂天井(奥野部)、天満神社(夜久野町宮垣)などの作品写真をスライドで次々と紹介し、ポイントを示しながら「丁寧な仕事をしています」「力強い作品です」などと解説を加えていった。 講演後半では「中井氏に劣らぬ彫刻家」として、福知山の相野(安井)安右衛門を取り上げた。文政4年(1821)~明治29年(1896)の人。「綾部の志賀郷で生まれ、大坂で修業してから福知山へ移住し、京町の安井家に入った」と略歴を伝え、今西神社(夜久野町今西中)、久昌寺(寺町)など丹波丹後の作品を紹介。「中井権次の作品と見まごうほどの出来栄えだ」と解説した。 講演会場となった東光寺本堂では、欄間の龍の彫り物がよく見えるように大月康永住職が照明をしつらえ、休憩時間や講演後に来場者たちが撮影する時間も設けられた。