【築地便り】穴狙いは必要ないJRA賞投票 難解なマイル部門は一撃ロマンか通年ソウルか…
今年、JRA所属馬の海外遠征のべ頭数は初めて3桁を数えた(103頭)。多くの馬が世界に羽ばたいたものの、18年以来6年ぶりに海外G1は未勝利に終わった。一方で、日本の安田記念を香港馬ロマンチックウォリアーが勝利した。海外調教馬によるJRA・G1制覇は15年高松宮記念(エアロヴェロシティ)以来、9年ぶりのことだった。 昨年、世界1位のレーティングを得たジャパンCには“キングジョージ”勝ち馬ゴリアット、ディープインパクト最終世代のG1・6勝馬オーギュストロダンなどが参戦してきた。勝ったのは22年ダービー馬、ドウデュース。日本で、世界で熱い戦いが繰り広げられた1年だった。 24年のG1は29日大井の東京大賞典でのフォーエバーヤング優勝で幕を閉じた。1年を振り返る年の瀬。記者にはもう1つ大仕事が待っている。JRA賞の投票だ。在籍する記者クラブにもよるが、在京新聞社など17社が加盟する東京競馬記者クラブでは、満3年以上の在籍がある記者に投票権が与えられる。 各部門賞は全部で10部門ある。内訳は最優秀2歳牡馬、最優秀2歳牝馬、最優秀3歳牡馬、最優秀3歳牝馬、最優秀4歳以上牡馬、最優秀4歳以上牝馬、最優秀スプリンター、最優秀マイラー、最優秀ダートホース、最優秀障害馬。重複選出もあるが、各部門賞に選出された馬の中から、その年の“顔”ともいえる年度代表馬が選ばれる。 長くなったが、ここまでが前置き。各部門賞には毎年、頭を悩ませて、自分なりの根拠を導いて票を投じている。突出馬不在に応えるための「該当馬なし」も選べるのだが、ポイント制ではない選考において、その選択は個人的には権利放棄と同義だと考えている。当然、投票にあたっては正しいルールの理解が必須。今年、最も難しいのが、最優秀マイラーだ。 今年はおそらく2択となる。安田記念を優勝した香港馬ロマンチックウォリアーと、マイルCS優勝馬ソウルラッシュ。前者は香港の英雄的存在でもあり国内外G1馬6頭相手に完勝し、後者は国内外のマイル5戦で全て3着以内。当然、どちらもすばらしい活躍だ。 選考基準をおさらいしたい。JRA賞にはさまざまな規約がある。2頭にかかるのは日本中央競馬会JRA賞表彰規則の第2条。その第1項には「当該年度の中央競馬の競走(本会が勝馬投票券を発売する海外競馬の競走を除く。以下同じ。)における成績により(中略)、JRA賞を授与する」とされている。続く同第3項には「第1項に規定する成績について、中央競馬の競走馬の場合には(中略)、地方競馬指定交流競走であつて理事長が適当と認めたもの及び理事長が指定する外国の競馬の競走について(平成7年理事長通達第63号)に規定する外国の競馬の競走の成績を含むものとする」と記されている。 ざっくりと要約すれば「JRA所属馬はどのレースもJRA賞の対象だけど、その他の所属馬はJRAのレースのみが対象ですよ」、ということだ。ロマンチックウォリアーは“地元の香港”で海外馬券発売のあったQE2世C、香港Cでも日本馬を撃破した。どちらも2000メートルではあるのだが、そもそもこちらはJRA賞の選考基準レースからは外れている。 つまり、一撃のインパクトか、1年通した活躍を評価するか…。ここから先は投票権のある個人の解釈で、毛色の違う本命が2頭いる接戦になると考える。ちなみに、外国馬がJRA賞を受賞すれば史上初。部門賞に選ばれた時点で、年度代表馬選出の可能性も出てくる。 他にも接戦が見込まれる最優秀ダートホース、最優秀スプリンターなども魅力的な馬たちから1頭に絞らねばならない。もちろん主観は尊重されるべきだが、競馬の予想と違って賞レースばかりは穴党不要。24年のJRA賞受賞馬は来年1月7日に行われる選考会を経て発表される予定となっている。ルールをしっかりと読み込み、熟慮を重ねた上で投票に臨みたい。 今年もいろいろあった1年でした。読者のみなさま、24年もありがとうございました。【松田直樹】