「汁もの+ご飯+お漬物=汁飯香」が健康の秘訣、長寿県・長野在住の料理家の食卓
「食事の理想は、“飯”+“一汁三菜”ですが、そうはいかないときもあります。これをぐっと凝縮させて“汁飯香(しるめしこう)”、つまり汁もの・ごはんもの・お漬物の形にすることも多いんです。 【写真】長野県木曽地方に古くから伝わる保存食「すんき」を使った汁物 手間なく用意できて、しみじみとおいしく、ゆっくり味わえばおなかも満足します」 と言う横山タカ子さん(76)。長野県に伝わる郷土食の“守り手”として注目を集めている料理研究家だ。
“汁”や“飯”を具だくさんに
「毎日、今日は何を食べようか、どう組み合わせようか、と考えるのは、楽しくもあるけど悩ましい。“汁飯香”ならシンプルなので、面倒がなくストレスもありません」 “汁飯香”にはポイントがある。“汁”や“飯”に、具材をしっかり混ぜ込むこと。 「例えば、豚汁なら、タンパク源になる肉も、食物繊維たっぷりの根菜も一緒にとることができます。ごはんを主役にしたいときは、肉や魚、野菜、大豆製品を混ぜたり、のせたり、炊き込んだりして、食べごたえと栄養をプラス。 そして“香”、お漬物には、季節の野菜を使って旬ならではの甘みやコク、ほろ苦さといった風味を存分に楽しみます。 お漬物のことを昔から“香の物”というのは、塩やしょうゆなどで漬けることによって、野菜の香りが際立つからでしょう。さらに、発酵が進めば、なんともいえない食欲をそそる香りがするんですよ」 夫婦ともに元気で暮らせている健康のヒケツは紛れもなく「食事」。長年作り続けているレシピを紹介してもらった。
郷土でなじみの素材を
「汁ものや煮物の味の決め手は、“だし”。私は煮干しをもっともよく使います。鍋で煮出すこともありますが、便利なのは“水だし”。保存容器に煮干しと水を入れて冷蔵庫で保存しておくだけのほったらかしです」 いつでもさっと取り出して使え、少量のだしが必要なときや、茶碗蒸しなど冷たいだしが欲しいときにも重宝する。 「カルシウムをしっかりとりたいときには、煮干しをまるごと粉状にした“煮干し粉の水だし”が便利。ただし、汁がにごるので、すまし汁には不向き。 濃厚なだしをとりたいときには、煮干しに昆布、干ししいたけ、大豆をブレンドした“旨(うま)だし”がおすすめ。薄味に仕上げたいすまし汁や煮物に向いています」 保存の目安は、どれも冷蔵で3日ほど。そんなだしを使いつつ、郷土でなじみの素材を使った“汁もの”を2つ紹介する。 「“いり菜汁”は青菜を炒めて汁仕立てにしたもの。信州では野沢菜を使い、大鍋でたっぷり作ります。ここでは、みそ仕立てにしてみました」 野沢菜の代わりに小松菜などでもよいそう。 もうひとつは、すんきのみそ汁。すんき漬けは、長野県木曽地方に古くから伝わる保存食。 「赤かぶの葉を乳酸発酵させたもので、漬物ながら、塩をいっさい使わないのが特徴です。すっきりした酸味があり、そのままお茶漬けにするのはもちろん、みそ汁に入れるのがお気に入りです」 すんき漬けには、20種類以上の乳酸菌が多く含まれているといわれているそう。おすしを作る際、刻んですし飯に混ぜるのもおいしい。