【社説】「非常戒厳は野党警告用」「私は間違っていない」と主張する尹大統領
尹錫悦（ユン・ソクヨル）大統領が、非常戒厳宣布は野党への警告用であり、自身に誤りはないとする趣旨の発言をしたという。「民主主義の自害の脅迫犯」を自認しても、国民には最小限の謝罪さえしない尹大統領は、これ以上そのポストにいる資格はない。 尹大統領は4日、与党「国民の力」のハン・ドンフン代表ら党指導部や重鎮と会った場で「共に民主党の暴挙のため、やむをえず非常戒厳を宣布した」と述べたと、ハン代表が伝えた。尹大統領は「野党に強力なシグナルを送ろうとしたもの」だとし、自分は間違っていないと述べたことがわかった。武装した軍人に国会議事堂を踏みにじらた反民主・反憲法・反歴史的な行為をしておきながら、野党を脅迫しようとして「一度やってみた」ということなのか。非常戒厳は腹いせによる一晩のいたずらなのか。あの日の夜に全国民が体験した混沌と恐怖、悲惨な思いを少しでもわかっているのだろうか。 尹大統領は正常な判断力と統治力を喪失した。尹大統領は非常戒厳宣布によって、自ら憲政秩序を揺さぶる「反国家勢力」「亡国の元凶」になった。そうしておきながらも、いまだに野党のせいにし、自身を合理化して、弾劾訴追を回避しようとしている。信頼と権威をすべて失った尹大統領が今後いかなる謝罪を約束したとしても、国民は信じないだろう。窮地に追い込まれた尹大統領が、第2の非常戒厳宣布や南北関係の危機を高める行為に踏み切るのではないかと、国民は不安に思っている。 すでに現実化している外交リスクも大きな問題だ。米国務省のカート・キャンベル副長官は、尹大統領の非常戒厳宣布を「きわめて誤った判断」だと批判した。来年1月には米国でトランプ政権が発足するなど厳しい国際情勢の中、尹大統領は国家首脳としての威信の失墜により国際舞台で自らの役割を果たすのが難しくなった。5日に予定されたスウェーデン首相の訪韓は無期限延期になり、日本の石破茂首相の1月の訪韓も不透明になるなど、外交に支障をきたし始めた。 内閣と参謀のシステムも崩れた。国務委員は非常戒厳宣布のために急設された国務会議（閣議）の定足数合わせのかかしになっただけで、職を賭けて抵抗した者はいなかった。大統領室の参謀たちも、尹大統領の民主主義破壊の決定過程から排除され、存在理由を失った。彼らは後になって責任を痛感するとして集団で辞意を表明したが、統治者が不変であるかぎり、国政の動力が復活するのは難しい。 リーダーシップを完全に喪失した尹大統領は、一日もはやく退陣し、新しい政権への道を開かなければならない。それが歴史を前にした最小限の道理だ。さもなければ、怒れる市民の弾劾のろうそくに最後には屈することになるだろう。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
