NBA差別問題でチーム消滅の危機
なぜ差別発言が表面化したのか
ただ、給料を払うだけではなく、スターリング氏はここまで4年の間に、レンジローバー、フェラーリ、2台のベントレーを買い与え、180万ドル(約1億8700万円)のマンションも彼女のために購入したというから、二人の関係が単なる仕事上のものとは、もう誰も信じないだろう。 スターリング氏の正妻も当然関係を疑い、ついに強硬手段に打って出た。今年3月7日、スティビアーノに対し、スターリング氏から与えられた金品すべてーー総額で2億円近くーーを返却するよう、訴えを起こしたのである。対してスティビアーノは、4月21日に訴えを取り下げるように求めたものの、逆にスターリングの奥さんは、録音したものも合わせて提出するよう迫った。 テープが世に出たのは、その4日後。おそらく、偶然ではあるまい。スティビアーノは、流出させたことは一貫して否認。身を守るために、第三者にコピーを預けていたといい、そこから洩れたとしているものの、一連の経緯を辿る限り、彼女の意志が働かない限り、そういうことにはならないだろう。 さて、こうして嫉妬に駆られて起こしたスターリング夫人の行動が、図らずも事件の引き金を引いたわけだが、スターリング氏が差別発言をしたのは、スティビアーノがマジック・ジョンソンと一緒に映っている写真をインスタグラムに載せたことによる嫉妬とも受けとれる。 今回の件は、人種差別問題が全面に出てはいるが、元を辿っていくとそんな痴情のもつれが見え隠れし、リーグを震撼させたのは、情けないことにそれが実態ともいそうだ。 ところで今回、不運にも巻き添えをくった人がいる。全米黒人地位向上協会のロサンゼルス支部は、5月15日にスターリング氏を、「黒人の地位向上に貢献した」として、表彰する予定だった。 それを撤回したのはもちろんだが、同時に、ロサンゼルス支部のトップは辞任に追い込まれた。株を上げたシルバーコミッショナーとは対照的だった。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)