NBA差別問題でチーム消滅の危機
過去の差別問題
永久追放は、当然と言うより、避けられなかったか。NBAには前例がなく、参考に出来るとしたら、大リーグの事例で、1990年代に2度、レッズの女性オーナーだったマージ・ショットが、人種差別発言などで、一時的な追放処分を受けたことがあった。 一連の事件の中には、彼女が、当時の日本の首相だった宮澤喜一氏に会った後、宮澤氏の英語のアクセントを面白可笑しく真似て、小馬鹿にしたというエピソードも含まれ、アジア系アメリカ人に対して差別的な発言を繰り返していた。結局、計3年半の追放の後、大リーグ機構は、ついに彼女にチームの売却を迫ったわけだが、最初の段階で対応を誤ったとの見方もあり、それがその後の問題を引き起こしたとも見られていた。 そうしたケースも踏まえた上で、NBAがどう判断を下すのか。同時にコミッショナーに就任したばかりのシルバー氏の手腕を問う機会ともなったが、彼にしてみれば、永久追放以外の選択肢など、なかったのではないか。会見が行なわれた29日の夜、3試合のプレイオフが予定されていたが、甘い処分を下すなら、選手会は、その日の全試合をボイコットする構えを見せていたのである。 それでも永久追放は、重大な決断。多くは、シルバーコミッショナーの勇気を賞賛した。 「引退した選手も現役選手も、シルバーコミッショナーの処分に満足している」(マジック・ジョンソン) 「我々のリーグを守ってくれたありがとう。素晴らしいリーダーシップだ」(レブロン・ジェイムス) 「私は、シルバーコミッショナーに下した決断を100%指示する」(マーベリックスオーナー、マーク・キューバン) 「シルバーコミッショナーにスタンディングオベーションを送りたい。リーグに、そして選手らにとって大きな決断だった」(ステファン・カリー) さて、今回の処分で一応の決着は見たわけだが、まだまだ先は長い。現実的にはまだ、スターリン氏が、出入りを禁じられているとはいえ、クリッパーズのオーナーのままなのだ。