NBA差別問題でチーム消滅の危機
NBAコミッショナーの英断
今年2月1日に正式にNBAのコミッショナーに就任したアダム・シルバー。それまで何度か見掛けたことはあったが、表情に変化がなく、どこか冷たい印象を受けた。まるで血が通っていないような・・・。とんだ見当違いだった。 4月29日、彼は、差別発言が明らかになったクリッパーズのドナルド・スターリングオーナーに関して会見を行ったが、顔を赤くし、ときに声を震わせながら怒りを露にし、強い口調で処分を下した。「スターリング氏を永久追放とする! NBAに、彼の居場所はない!」 ことの発端は、4月25日の夜に米芸能サイト「TMZ」が、スターリング氏とその彼女による会話を暴露したことによる。その内容はといえば、スターリング氏が黒人を侮辱するもので、「黒人なんて、イスラエルに行けば、犬も同然だ。そんな彼らを、私の試合に連れてくるな!」などとまくしたてていた。 その女性が、クリッパーズには多くの黒人選手がいると反論すると、「俺があいつらの家を買ってやったんだ、俺が、あいつらの車を買ってやったんだ、俺のおかげで、飯が食える!」とリスペクトのかけらもなかった。ひどい言い様ではあるが、NBA関係者にとっては、驚きとはいえなかった。元々、スターリング氏は、差別的な人物と見なされていたのだ。 「黒人は臭い」。「ヒスパニックの連中は、すぐに集まって騒ぎだす」。 彼はそう言って、自分が所有するアパートに黒人やヒスパニック系の人が入居するのを拒んだことがあり、2006年にそれが原因で訴えられ、3年後に273万ドル(約2億8000万円)を払って和解したものの、渋々だった。 そもそも過去、オーナーとしての品性を疑われたこともあるような人物だ。32年前、選手の給料や遠征先のホテルの支払いが遅れ、また、チームを勝手にサンディエゴからロサンゼルスに移そうとしたり、わざと負けて、ドラフト1位指名権を獲得しようと画策したりしたとして、リーグから度々警告を受けた。そのとき、1万ドル(約104万円)の罰金ですんだのは、スターリング氏がチームを売却し、NBAの世界から身を引くことを約束したからでもあるが、それは実行されないまま、ここまで来たのだった。