「犠牲者の名誉を回復したい」――精神医療の近代化と「私宅監置」
保健所の職員だった玉城さん
私宅監置の行政手続きに携わったことのある人に会うことができた。 沖縄県在住の玉城勝利(たまき・かつとし)さん(76)は、19歳で名護市の保健所(琉球政府厚生局名護保健所)に就職した。精神保健担当に配属された玉城さんは、住民から私宅監置の申請があると、その家を訪問して、患者の状態や家族の暮らしぶりを確認した。 玉城さんは「好き好んで閉じ込めていた人は一人もいません」と言い切る。「こんなふうに聞かれるのも本当は嫌なんです」 監置の申請は、行政的には「監置許可」という。監護義務者となる家族が、監置される「精神病者」の名前や年齢、監護者の住所・氏名、「精神病者」との関係を書いた書類を作成する。発病の年月日、症状などを記した書類や、医師の診断書も必要だ。それらに、監置小屋の見取り図を添付して、保健所に提出する。 保健所は「精神病者」の状況を調査し、琉球政府の担当部署に提出し、最終的に行政主席の決裁を経て、監置許可が下りる。監置後は警察の管轄になる。
監置されている人たちの状況を見て回るのも、玉城さんの仕事だった。 「まず(名護保健所管轄の北部)12市町村にそういう患者がいるのかいないのか。いるなら何名いるのかとか、逆に変な形で処置されていることもあるので、申請がないときには、役所の衛生課と一緒になって調査して歩くわけです。(民家が山中にあるから)バイクで山に登っていって、包丁を持って追われて帰ってきたり。いつでも逃げられるようにエンジンをかけっぱなしにしておくんです」 玉城さんが見た中では、小屋ではなく、家の裏座(沖縄の民家で、北側[裏側]にある部屋。寝室や産室として使われた)に監置されている人もいた。 「女性だと(小屋に置いておくと)性的暴行を受けることがあるので、裏座にかくまって。女性は暴れても危害を与えるほどではないんですけど、男性だともうすごい暴れますよね。みんなすごく繊細なんです。不用意に刺激してはいけないので、私はだいたい縁側から中の様子を見たり、家族に話を聞いたりしていました。小屋も中までは入りませんでした」 「家族はみんな、苦しいわけです。どうにかして助けたいというのが、まずありますから。本当は病院に入れて、しっかりと治してもらいたいというのが親の心でしょ」