矢野・石原選手ら台頭、若手活躍に希望…新井監督「何も残らなかったシーズンとは思っていない」
10月5日、広島東洋カープはマツダスタジアム(広島市南区)での今季最終戦で、東京ヤクルトスワローズに3―1で勝利し、意地を見せた。試合後のセレモニーで新井貴浩監督(47)は4位に終わったことを「監督である私の力不足」とファンに謝った後、こう続けた。「何も残らなかったシーズンとは思っていない。少しずつではあるが、若手は成長している」 【図表】今季の成績
2016~18年にセントラル・リーグ3連覇を果たしたカープは、19年から4年連続でBクラスに沈んだ。チーム再建を託され、22年オフに就任した新井監督は、若手の育成に注力。今季、<新井チルドレン>の代表格として矢野雅哉選手(25)が台頭した。
大阪府出身で、亜細亜大学からドラフト6位で入団した4年目。昨季は93試合に出場し、今季は守備固めや代走要員で出番を増やし、5月中旬から主力の小園海斗選手(24)を三塁に押しのけて、遊撃の定位置をつかんだ。
強肩と守備範囲の広さが持ち味。「(1試合で)相手のヒットを4、5本はアウトにしている」と新井監督は絶賛。「守り勝つ野球」を体現する存在だ。
課題の打撃でも成長が見えた。8月31日に2季ぶりの本塁打をマークすると、9月1日のヤクルト戦ではランニング本塁打を記録。力強いスイングで中堅手の頭上を越し、快足を飛ばして一気に本塁まで生還する躍動感あふれたプレーだった。昨季までの3年間で1割9分4厘が最高だった打率は今季、2割6分をマーク。「相手が嫌がる打撃をもっと出していきたい」と語る。
捕手の石原 貴規(ともき)選手(26)も飛躍の足がかりを作った。日本代表「侍ジャパン」の坂倉将吾(26)、会沢翼(36)両選手とのポジション争いに加わり、56試合に出場。強肩やリード面での成長に加え、7月にはサヨナラ本塁打を放つなどパンチ力も増している。「打撃も守備もレベルを上げる」と意欲的だ。
投手陣でブレイクを果たした1人が、黒原拓未投手(24)だ。新井監督が「真っすぐも変化球もいい」と評する3年目の左腕は今季、53試合に登板し、防御率2・11と救援陣の柱となった。
会沢選手や菊池涼介選手(34)、田中広輔選手(35)ら3連覇時の中心メンバーがベテランの域に達する中、今季終盤まで優勝を争うことができたのは、若手の力が大きかった。来季、雪辱を果たすためには、さらなる新星の登場が欠かせない。
読売新聞