米国4月雇用統計後に一時1ドル151円台までの円高:日米金融政策が逆方向に動き出す秋まで、円安阻止の為替介入で時間稼ぎができるか
秋には日米の金融政策が逆方向に動きドル高円安が一巡か
日本政府は、しばらくは為替介入を行わず、静観するのではないか。この円高に振り戻されたタイミングで、5月2日と同様に「円押し上げ介入」を行えば、円高方向にさらに水準を修正することは可能だろう。しかしそれを行えば、米国政府から「相場操縦」との批判を浴びかねない。次の為替介入は、ドル円レートが再び1ドル160円へ接近していくタイミングで行われるのではないか。米国の経済指標次第では、ドル円レートは再び1ドル160円台に乗せ、1ドル165円程度の攻防となる可能性が残されている。 現時点では、日本銀行は最短で9月に追加利上げを行うことが予想される。他方で、FRBは同じく9月に利下げを行うことが現時点では予想されている。日米が逆方向に金融政策を修正するとの観測が強まれば、為替市場ではドル高円安の動きは収まる、あるいは反転することが予想される。 そうした期待が強まることで円安圧力が低下することが期待される夏から秋までに、為替介入によってどの程度円安を抑え込むことができるか、時間稼ぎができるか注目される。 4月25日の金融政策決定会合で、円安阻止に向けた政府の日本銀行の連携への期待を、日本銀行自らが崩してしまった。日本銀行が再び政府との強い連携をアピールし、また、円安けん制の口先介入を行えば、政府の為替介入策と合わせて、最悪ケースでも1ドル165円前後で円安ドル高の流れを食い止めることができるのではないか、と現状では考えておきたい。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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