新・領域戦―サイバー戦どう備える(2) 脅威の変化「国家の戦い」の手段に
このように、現在の不確実・不安定な安全保障環境においては、サイバー領域における攻撃が「国家の戦い」の手段として、重要な意義を持ち始めているのがもう一つのサイバー戦の脅威の変化ということができます。 特に、サイバー攻撃や電子戦攻撃は、開発の容易性、安価かつ証拠が残りにくい等の費用対効果から、攻撃を発動する政治的な閾値(しきいち)が低いことが問題の解決を遅くしていると言えます。
サイバー・フィジカル・システムとしての防護(防御)
サイバーセキュリティに関する「国家のレジリエンス」を確保するためには、「国家としてサイバー・フィジカル・システム全体の防護」について考える必要があります。
国際的な枠組みの構築、国際法及び国際規範
国家の行う重要な施策の一つが、「国際的・戦略的な対応」です。サイバー領域の安全な使用のための国際協力、国際法、国際規範等の問題解決に積極的に参画することは、ICT先進国として当然であり、また、日本の置かれている地政学的な立場等も踏まえて日本の考え方を反映させることも重要な施策です。 国際秩序の構築については、その努力は為されているものの、依然として完全な国際的な合意に至っていないのが現状です。しかしながら、どの国も情報活動を含む国家間のサイバー攻撃の被害者としての意識があり、また昨今のテロ活動を自国の脅威と考えていること等から国家間には最低限守らなければならない規律・規範が必要との認識が共有され始めています。
国際公共財(グローバル・コモンズ)としてのサイバー領域における国際的な秩序の構築は、「情報への自由なアクセスの保証」「プライバシーの保護」「情報資産等の保護」及び「悪意ある活動の排除」等の共通目標を基調としています。 国際的な枠組みの構築については、安全保障上のパワーバランスのような対立構造を反映して抑止の体制を目指す同盟等の枠組み及び国連等の集団安全保障体制による多国間の協調構造による枠組みがあり、複層的な枠組みが並行して秩序の構築を目指しています。 国連では第一委員会の下にサイバーに関する政府専門家会合(GGE)が開催され、いくつかの議論と包括的な合意がありますが、サイバー領域の安全使用についての核心的な部分では合意できていません。また、APECやARFのような枠組みにおいてもサイバーの脅威について議論されることが多くなっており早期の秩序構築が望まれています。その他、二国間あるいは複数国家間においてもサイバー関連の対話が行われています。