年収450万円、“可もなく不可もなく”な日々を過ごす42歳サラリーマンが「人数合わせの会議」で気づいた〈年商600万円の副業〉のタネ【経営コンサルタントが解説】
ITサポートを「副業」にするも、高いハードルに苦戦
やがて亮さんは副業として、個人向けのITサポートやパソコントラブルの解決サービスをはじめることにした。当初は友人や知り合いをターゲットに、ちょっとしたお小遣い稼ぎのつもりだったが、実際にビジネスとしてお金を取るとなると、思ったよりもハードルが高いことに気づいた。 知り合いといえど、顧客の要求レベルは想像以上に高く、トラブルが解決しない場合はクレームが来てしまう。収益も安定せず、心身ともに疲弊し、「やめてしまったほうが楽かもしれない」としだいにモチベーションが下がっていった。 また、亮さんのサービスは、特に目新しさや独自性があるわけでもない。同様のサポートは他にも多くあり、大きな会社ほど価格も安い。他のITサポートと差別化できず、価格競争に巻き込まれることもしばしばあった。 妻からも、「もう少し、あなたらしさが活かせるようになれば軌道に乗りそうだけど……」と指摘され、亮さんは自分のやり方に迷いを感じていた。 「高齢者向けデジタル教室」に販路を見出す そんななか、知り合いづてに近所の高齢者サークルから「最近のデジタルデバイスについて、使いこなせない高齢者が多いので、操作方法を一から解説する教室を開いてほしい」という依頼が入った。 当初、亮さんは「教えることはもう苦手意識が芽生えているし、相手は高齢者か……」と気が進まなかったが、とりあえずやってみることに。 すると、彼の丁寧でわかりやすい説明は高齢者たちに大変喜ばれ、「松田さんのおかげで孫とLINEができるようになった」などと、驚くほど感謝されたのだ。 これをきっかけに、提供するサービスをパソコンを中心とした「ITサポート」からさまざまなデジタルデバイスについて包括的にサポートする「デジタルライフサポート」へと転換。主なターゲットは高齢者とし、シニア向けのデジタル教育とトラブル解決を柱にサービスを展開することを決意した。 受けがよかった対面講座に加え、ビデオ通話を使ったリモートサポートや少人数制のワークショップなど、地域に密着したサービスを提供しはじめた。 すると、彼のビジネスはだんだんと口コミで知名度を上げ、「松田さんの講座はわかりやすい」と評判に。地域の福祉施設やシニア向けマンションからも依頼が入るようになり、収益は安定していった。 年商は600万円を超え、仕入れ・在庫の要らない無形資産ビジネスであることから、年商はほとんどそのまま自分の収入となった。副業からスタートしたデジタルライフサポートビジネスはやがて本業へと成長し、現在は法人化を検討中だそうだ。 以前はただの“社内にいる便利な人”だった亮さんも、いまではデジタルライフサポートの第一人者として地域で知られる存在になり、やりがいと充実感を感じる毎日を送っている。
スキルという名の「無形資産」を再発見し、新たな価値を創る
松田さんの事例は、自分のスキルを新しい視点で捉えることが重要であると教えてくれる。 彼の成功のカギは、単に「解決してくれる人」から初心者でもできるよう「教える人」になることで、自身のトラブル解決スキルに新たな価値を創造した点にあった。 周りからのネガティブな意見も、自分の可能性を広げるきっかけになることがある。亮さんのように、自分の得意分野を再発見し、それをビジネスに変える勇気が、新しい成功をつかむ契機となるだろう。 鈴木 健二郎 株式会社テックコンシリエ 代表取締役
鈴木 健二郎
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