「米金融界の重鎮」が予測するトランプ就任後の「破滅シナリオ」…「世界の主要都市のどこかで核が爆発する」そして金の価格は過去最高値を更新へ
トランプの危険な“取引”
ダイモン氏はまた「ロシアと北朝鮮とイラン、そして中国が結託して欧米のシステムを取り壊しにくる」として、それが経済体制の破壊を招くとも言及している。社会学者の橋爪大三郎氏はさらに踏み込んで「トランプ自身が独裁者と手を組み、一緒になって世界秩序を壊していくのではないか」と予測する。 「トランプは各国首脳との直接取引(ディール)を好みますが、独裁者が相手のほうが話が早く、面倒で長たらしい交渉をしなくてもすむので、成果を出すためにもプーチンや習近平、金正恩らとの交渉を好んで行うようになるでしょう。 しかしディールとは、相手からも取るがこちらからも何かを与えることが前提です。極端な話として、トランプが中国のEV系の会社をイーロン・マスク率いるテスラ社と統合させて、世界中にEVを売ろうと目論むと想定しましょう。そのディールとして、中国に台湾をくれてやっても構わないと思っているかもしれない。それによってアメリカの経済は上向くかもしれませんが、世界の秩序は崩壊します。 トランプのディールは、たった一つで秩序を壊してしまうような危険性を内包しているのです」
世界的投資家は“トランプ後”をどう見る
トランプ後の世界経済の見通しは暗い。ダイモン氏らが指摘するような紛争の勃発や経済システムの混乱を見越してか、最も安定した資産である金が買われており、ゴールドマン・サックス・グループは「トランプの任期中、金の価格は過去最高値を更新するだろう」との予測を発表している。 一方、悲観的になりすぎる必要はないとの見方もある。『億までの人 億からの人』の著者で、ゴールドマン・サックスに17年勤務した田中渓氏は「ダイモン氏の発言も、ある程度は差し引いて受け止めたほうがいい」として理由を説明する。 「長くJPモルガンのCEOを務めるダイモン氏ですが、任期は間もなく終わるとみられています。そのような状況下で意見を求められると、明るく現実的な未来を示すよりも、後世への警鐘として厳しい予想図を残しておくほうがよいと考えたのではないでしょうか。 実際、世界的に活動する投資家とトランプ後の経済について意見交換をすると、楽観的に考えている人も少なくありません。『第一次政権を振り返っても、ビジネスマンでもあるトランプが最も重視しているのは株価の上昇だとわかる。だから、株価が大きく下がるような政策や行動はとらないだろう。ウクライナ戦争を停戦させれば、空の移動の自由が戻ることになり、世界経済が再び活性化するはずだ』といった声も聞かれます」 ダイモン氏が懸念する破滅シナリオは現実のものとなるのか。あるいはただの杞憂に終わるのか―いまわかっているのは、少なくともこれから4年間、トランプによって破綻の引き金が引かれる可能性を恐れながら、日々を過ごさなければならないということだ。 「週刊現代」2024年11月30日号より 【つづきを読む】『ここにきてバフェットが「アップル株」を「なぜか大量に売却」していたという事実が「意味するもの」』
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