大盛況の中、完走した全国ツアー『Laura day romance tour 2024 crash landing』最終公演@Zepp Shinjuku 【オフィシャルレポート】
序盤ですでにローラズの世界に肩まで浸った気持ちになったところで、井上がソールドアウトに謝辞を述べ、「最後まで楽しんで行ってください」と話す。なんら奇を衒うところのない彼女の様子はこのバンドの核だ。ここまでの没入感から一転、デビューアルバム『farewell your town』から続けて2曲「worrying things」「lookback&kicks」をセットしたことで音楽性のレンジを垣間見せてくれたのも楽しい。 シャッフルの楽しいナンバーでありつつ、グランジテイストのリフが飛び出した「worrying things」、ポストパンクなタイトなビートの上を駆けるような井上と鈴木のツインボーカルが清々しい「lookback&kicks」が久しぶりにライブでこれらのレパートリーを聴くファンを揺らしていた。普遍的なグッドメロディや60年代っぽい空気を孕んだポップスを思い出させながら、彼らがリアルタイムで吸収した00年代以降のビートやギターの音色が懐かしさに終始しない音像に着地する様子が、ライブだと手に取るようにわかるのだ。そしてリフもビートも歌メロのフロウも同調してグルーヴを作る「アイデア」では短いソロ回しも盛り込んで、プレイヤーに視線が送られる。 セットリストの折り返しを過ぎても井上は1曲が終わる時、それも時々「ありがとう」と言葉を発する程度で、長いMCもなく演奏に集中している。それはフロアも同様で「次はなんだろう」という無言の期待がいい緊張感をもたらしているからだ。そこに「winona rider | ウィノナライダー」の歌と演奏が同時に走り出す。井上の少し舌足らずなボーカルの中に“乳白色の思いが”とか“誰かにもらった綺麗な靴では”といった抽象と具体が、はっきりとはしないけれど思い出を過去のものにしていく。間奏の高音弦のベースフレーズが切ない。そしてアウトロに向かってピアノやギターの不安な旋律が重なり音も厚くなっていく様はちょっとくるりのロック曲のアンサンブルを想起させた。 ローラズの合奏のカタルシスの意外な側面でもあると思う。礒本のスネアとリムショット両方を活かしたプレイが耳を引く「waltz | ワルツ」も合奏のカタルシスを十分に発揮。ハチロクの大きなグルーヴに乗って鈴木が弾いた泣きのギターソロではフレット上を動くきゅっという音すら聴こえ、ピークに達すると背景の黒い緞帳が強い光に照らされステージ上がモノトーンに変化。見る人それぞれに感情を動かされる素晴らしい演出だった。そこから今年のシングルで、人や街に対する視線にタフさが加わった「Young life」に繋げていく曲順も秀逸。 シューゲイズな音の洪水を経て揺蕩うようなメロディとテンポの「brighter brighter」へ。エレクトロニックな音楽での重低音めいたベースがノスタルジックな曲調ながら現実に向き合っていくこの曲のアンビバレンツを表現しているかのよう。ここの2曲で改めて彼らの胆力を思い知った。意志の力を受け取った後、おとぎ話のような「little dancer | リトルダンサー」を届けてくれたことで、張り詰めていた緊張が解けた。 続くセクションは旧知のファンがイントロで沸いた「fever」でオルタナティヴなフォークというべき親しみやすいメロディを奏でる。続く「sad number」で明快な8ビートがグングン歩みを進めていく印象を与え、深呼吸するような大きなメロディがスライドギターの滑らかさの上に乗っていく「happyend | 幸せな結末」まで、ローラズのメロディの強さを体感させてくれた。その前のセクションののめり込むようなアンサンブルとは対照的なウォームさで、ライブが始まった時間から旅を経てきた果ての安堵感のようなものに包まれた。
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