【毎日書評】運気アップにつながる行動。まずは「スマホを遠くに置くこと」
そもそも運気は非科学的なものなのですから、『世界の研究101から導いた 科学的に運気を上げる方法』(堀田秀吾 著、飛鳥新社)というタイトルは多少の違和感を意識させもします。しかし、そこで注目すべきは、運気が上がっているかどうかは、次の2つの話に落ち着くという著者の主張。 1:出来事をどう解釈するか 2:出来事が起こる確率 (「はじめに」より) 前者は、心理学や脳科学の話が関わってくるもの。そして後者に存在するのは、統計的な法則。したがって「運気」というテーマは、きっちり学術的・科学的研究の対象になるというのです。 なお、本書では、運気を上げる方法を「ラッキーアクション」と「ハッピーアクション」に分類し、それらの根拠となる世界中のさまざまな研究を一緒に紹介する二部構成になっています。 外的な運は確率に左右されるため、自分でコントロールできませんが、試行回数を増やすことで幸運に巡り合う確率を高めることが可能。すなわちそれが「ラッキーアクション」。 対するハッピーアクションは、文字どおり幸福感を高めるアクション。自分の身に起こった出来事をどう解釈するかによって、「幸」にとしても「不幸」としても捉えることができるということです。 基本的に、幸運は肯定的な感情を持つかどうかという話なわけですから、幸福感を得やすいアクションをすることが運気を上げることになるわけです。(「はじめに」より) こうした考え方を軸とする本書の後半、すなわち第2章「幸福度を上げるハッピーアクション」のなかから、きょうは仕事でも関係しそうな2つのトピックスをご紹介したいと思います。
目の前の物事に集中する
情報や誘惑が多すぎる現代において、「目の前の物事に集中すること」は決して簡単ではありません。とはいえ集中することができれば、それ自体がハッピーアクションになるはずだと著者は述べています。 ハーバード大学のマシュー・A・キリングワースとダニエル・T・ギルバートは、オリジナルのiPhoneアプリを使って、13ヵ国に住む18~88歳の5000人を対象にさまざまな質問をして、回答を集めました。 すると、46.9%の被験者が、やっていることと考えていることが一致しているときに比べると、そうでないときのほうが幸せを感じない──という結果が出たのです。 この結果から、キリングワースとギルバートは、「幸福に必要なことは、心身が今に集中することである」としています。(158~159ページより) 脳は基本的に、マルチタスクが苦手。マルチタスクを行なっているつもりでも、実際にはシングルタスクを頻繁に切り替えているにすぎないのだそうです。なんとなく、理解できる話ではないでしょうか? しかも人は放っておくと、ネガティブなことばかりを考えてしまいがちでもあります。でも目の前のことに集中できていれば、脳はシングルタスクで積極的に働き出すため、不安が顔を覗かせる隙がなくなるはず。そのため結果的に、不安や不幸を感じにくくなるわけです。 「一心不乱」「無我夢中」「一所懸命」という四字熟語は、そういう意味では、非常に的を射た表現ですね。集中していれば余計なことを考えない、あるいは余計なことを考えないで集中してやる。これが大切だということです。 ちょっとことばは悪くなりますが、不安や不幸を感じるのは、「暇」だから。隙があるからなのです。(160ページより) だとすれば当然ながら、目の前のことに全力で集中して取り組んだほうがいいはず。そうすれば作業も効率よく進みますし、終わったときには達成感を得ることができるからです。ましてや結果も出せるわけなのですから、いろいろな意味でいいのです。 故スティーブ・ジョブズは、「この地上で過ごせる時間には限りがある。本当に大事なことを本当に一生懸命できる機会は、二つか三つくらいしかない」と述べています。(161ページより) つまり、大事なことだけに一生懸命になることこそ、幸せの秘訣だということ。(158ページより)