救急搬送“緊急性なし”で有料に 茨城で『新制度』県単位では初
救急車を利用した患者が緊急性がなかったと判断された場合、病院にお金を支払う制度が茨城県で始まりました。急を要さない救急車の利用を減らすことが目的ですが、119番をためらうことも懸念されていて、救急医療の在り方が問われています。 【画像】救急搬送“緊急性なし”で有料に 茨城で『新制度』県単位では初
■119番の現場は
「119」は1分1秒を争う火事や病気の命綱です。年々深刻さを増す救急車の逼迫。慢性的に足りないのには、全国共通の悩みがあります。茨城県では、わずかな出血のすり傷や慢性的な腰痛などでは救急車を呼ばず、地域のクリニックを受診するよう求めてきましたが…。 実際の119番通報の事例 「歯が痛い」 「しゃっくりが止まらない」 「蚊に刺された」 こうした症状で救急車を要請する人が少なくないのが現実です。去年の救急搬送はコロナ前より多い14万3046件。そのうち半数近くが『軽症等』でした。
医療現場では2日から、都道府県では初の試みが始まっています。茨城県では、22の大規模病院で、搬送時に緊急性がなかったと判断した患者から『選定療養費』を徴収します。 選定療養費とは、患者が紹介状を持たずに大きな病院を受診した場合に支払うもので、金額は病院によって異なりますが、最大で1万3200円を払うケースもあります。 この日、頭痛とめまいで動けなくなった40代の女性が搬送されてきました。 筑波記念病院救急専門医 入山大希医師 「中年の方のめまいの症状。重症・軽症で言うと、おそらく帰れる軽症の部類には入ると思う」 女性は、搬送された病院が“かかりつけ”だったことから、選定療養費の請求は対象外でした。また、県のガイドラインでは餅などをのどに詰まらせて「呼吸が苦しい」、呼びかけても「返事がない」などの場合は、ためらわず救急車を要請してほしいとしてます。
緊急か、緊急ではないか、判断するのは医師です。 筑波記念病院救急専門医 入山大希医師 「軽症で選定療養費を取らない境目が、どうしても県が示している目安、患者が思う軽症と、最終的に僕らが思う軽症は少しずれがある。アナフィラキシーを起こすことはあるので、ある程度、軽い症状で呼ぶことは許容していかないと線引きが難しい。まだ始まったばかりで、実際には手探りで現場判断でやっているところが大きい」 看護師も。 筑波記念病院 飯島雄希看護師 「今後トラブルがないとは言えないが、看護師は養護する立場にもあるし、医師と患者の中間に立つ役割もあるので、皆で情報を共有していこうかなと」 筑波記念病院では、年間約6000件のうち、7~8割が軽症だといいます。 筑波記念病院 榎本強志病院長 「最近は救急車の搬送数が増えてきて、必ずしも救急車に乗らなくてもいいような方が搬送されてきますから、そういう患者の救急車利用が控えられれば、救急病院にとってもかなり利点がある」 医師にも難しい線引き。どうすれば良いのでしょうか。 筑波記念病院救急専門医 入山大希医師 「これが救急車を呼ぶかどうか迷った時の相談ダイヤルで。お困りの際には活用して頂けると。救える命を見落とすのは一番僕たちも望まないので、呼ぶ時は躊躇(ちゅうちょ)なく呼んでほしい」 近年、自治体で導入が広がっている『#7119』は、行政から委託を受けた民間会社などが運営しています。病状を伝えると、救急車を呼ぶべきか、別の方法で受診するべきかを判断してもらえます。 3日の日中8時間で、筑波記念病院に搬送されてきた患者3人には、支払いが生じる人はいませんでした。茨城県内では、この取り組みが知られるようになったことで、すでに1割以上、軽症の搬送が減ったと話す病院もあります。