御前崎市産の干し芋を使ってスイーツを開発したメンバーら＝御前崎市役所

　御前崎市発祥の「干し芋」が今年で誕生200周年を迎えた。同市は浜岡砂丘に象徴されるように砂地が多いことからサツマイモ栽培が盛んで、干し芋はおやつや保存食として親しまれてきた。だが、近年は農家や作り手が減少し、“郷土の味”が忘れ去られつつある。干し芋のブランド力を再び強化しようと官民プロジェクトが動き出している。 　「干し芋のねっとりとした食感と凝縮された甘みがスイーツと相性がいい」。9月末、同市役所で開かれたプロジェクト会議。メンバー約20人が集まり、地元の菓子店など5店舗が御前崎市産の干し芋を使ったパンやケーキなどの試食を用意した。市の職員や農家、商工関係者らが味わい、好評を得て干し芋スイーツとして商品化することを決定。認知度拡大に向け、11月23、24の両日に市内で開催されるイベント「大産業まつり」で販売する。 　市によると、2000年に75軒あった市内のサツマイモ農家は、20年には26軒まで減少した。昔は各農家が蒸して薄く切ったサツマイモを外に並べ、「遠州のからっ風」と呼ばれる冬の季節風にさらすことで干し芋を作っていたが、今はその光景が消えつつある。50年以上にわたりサツマイモ栽培から干し芋製造まで手がける斎藤丈雄さん（74）は「安くておいしいが、農家の後継者不足で干し芋作りをやめる人も多い」と話す。 　市の山崎雅樹政策監は「今後は御前崎市産の干し芋のブランド力を市外にもアピールし、将来は若者の新規就農など地域の農業活性化につなげていきたい」と述べた。 　◆御前崎市の干し芋　御前崎市にサツマイモが普及したのは江戸時代中期。御前崎沖で座礁した薩摩藩の御用船の乗組員を地元住民が助け、船にあったサツマイモの種芋を譲り受け、その栽培方法を伝授された。1824年に地元の栗林庄蔵という人物がサツマイモを煮てから包丁で薄く切り、干して乾燥させる加工法を考案したのが始まり。