金融市場はトランプ再選をどう織り込むか:トランプトレードの再来も
再び「トランプ・トレード」が起こるか
6月27日の米大統領TV討論会後に、共和党のトランプ再選の可能性が高まったとの市場の見方から、米国で長期金利の上昇が一時顕著になった。トランプ再選となれば、追加関税導入による物価上昇圧力の高まりや減税持続などによる財政赤字の拡大が債券市場に打撃となり、長期金利の上昇をもたらすと市場は考える。 2016年11月の大統領選挙で共和党のトランプ候補が当選すると、米国債券市場では長期金利が大きく上昇し、イールドカーブのスティープ化が進んだ。これは当時「トランプ・トレード」と呼ばれた。トランプ前政権の経済政策が、財政赤字の拡大とインフレ圧力の高まりを通じて長期金利を押し上げるとの見方が強まったことによる。 トランプ前大統領は、2017年の税制改革で大型減税を実現させた。それは2025年末で失効するが、トランプ前大統領はそれを延長することを公約に掲げている。その場合、政府の歳入は今後10年間で4兆ドル(約650兆円)程度減少すると見積もられている。 他方、バイデン大統領は、減税を延長する対象を年収40万ドル未満の世帯に限定する考えを示している。さらに、減税延長による財政悪化は、高所得世帯と企業への増税で相殺する必要があるとしている。 この税政変更だけ見ても、トランプ前大統領の方が、バイデン大統領よりも財政環境を悪化させ、長期金利の上昇を促すことになる。
トランプ再選への市場の反応には相反する見方
しかしながら、トランプ前大統領が再選された場合に、その経済政策によって長期金利が上昇する、つまり「トランプ・トレード」が復活するかについては、金融市場で見方は分かれている面もある。 トランプ前大統領が掲げる追加関税の引き上げは、国内物価を押し上げ、財政環境の悪化とともに長期金利の上昇を促す一方、その物価上昇、長期金利の上昇、そして保護主義拡大による貿易の縮小が経済に悪影響を与えるため、それはいずれ長期金利の低下につながる面がある、とも考えられているのである。 トランプ再選の場合の金融市場への影響については、このように相反する見方があるため、現時点ではトランプ再選を織り込んで金融市場が大きく動く事態には至っていないともいえるだろう。 相反する見方は、為替市場にもある。トランプ前大統領は、国内産業を守るために、追加関税の導入とともにドル安を志向しているとみられる。景気情勢が悪化すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)に金融緩和を強く求め、それを通じてドル安誘導を試みる可能性がある。 他方、追加関税の導入による物価上昇や減税延長による財政悪化は、長期金利を上昇させ、それが内外金利差の拡大からドルを支える可能性がある。