金融市場はトランプ再選をどう織り込むか:トランプトレードの再来も
トランプ再選の経済への悪影響は過小評価されていないか
トランプ前大統領再選の場合の市場の反応についての相反する見方は、時間軸の違いによって説明できるだろう。トランプ再選の場合の経済政策は、追加関税など保護主義的な政策が貿易の縮小を招き経済を悪化させることで「株安」、財政悪化による通貨の信認低下のもとでドル安政策によって「ドル安」となりやすいだろう。 他方、長期金利については、最終的な景気の悪化の程度、物価上昇の程度、海外からの資金流入に影響を与えるドルの信認低下の程度によって決まるため、最終的に「債券安(長期金利上昇)」となるか、「債券高(長期金利低下)」となるかは事前には分からない。しかし、追加関税導入による物価上昇リスクや減税延長による財政悪化リスクは、短期的には「債券安(長期金利上昇)」をもたらしやすい。つまり、トランプ再選は少なくとも短期的には米国市場で株安、ドル安、債券安の「トリプル安」を生むと考えられる。 トランプ再選による米国及び世界経済への悪影響のリスクについては、ノーベル賞受賞の経済学者16人の書簡で指摘されているように、金融市場あるいは多くの人が考えるよりも大きい可能性に留意しておきたい(コラム「ノーベル賞受賞の経済学者16人がトランプ再選に警鐘」、2024年7月3日)。 (参考資料) ”Sudden Return of the Trump Trade Sends Treasurys Reeling(「トランプ・トレード」復活、揺れる米国債市場)", Wall Street Journal, July 4, 2024 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英