しまなみ海道の観光拠点、新施設で連泊促進 大三島のWAKKA、富裕層や法人需要開拓
広島県と愛媛県を結ぶしまなみ海道沿いのツーリズム施設「WAKKA」(今治市)が、来訪者の連泊促進を加速する。高価格帯の宿泊棟と、企業が研修などに使うトレーラーハウスを3月に相次ぎ開いた。観光地間の誘客競争が激しくなる中、訪日客にも人気のサイクリングや、島が連なる自然環境を生かした体験プログラムを織り交ぜ、エリア一帯の活性化につなげる。(共同通信=松田大樹) 運営する村上(むらかみ)あらしさん(48)は「自然の中で目いっぱい仕事がしたい」と東京のIT企業社長から転じ、2020年春にWAKKAを開業した。ドームテントやドミトリーといった宿泊施設に加え、自転車の出張修理や海上輸送でサイクリストを支援。無人島ツアーやかんきつ収穫といった体験プログラムは30以上あり、海道の観光拠点となっている。 宿泊棟の新設は、海外の旅行代理店から「富裕層向けの部屋はないか」と問い合わせが相次いだのがきっかけだった。
WAKKAの宿泊者は、自転車文化が根付く欧米豪からの訪日客が3、4割を占める。英語が堪能なスタッフが常時複数人おり、村上さんは「要望に合わせてサイクリングのコースや、ヨガや釣りなどの体験を交えて、込み入った提案ができるのが強み」と説明する。 海外のサイクリストから認知度が高まる一方、村上さん自身も「高価格帯の部屋が地域全体で不足している」と感じていた。オーシャンビューの客室で長期滞在に向くようキッチンやバスタブを用意。1泊朝食付きで1人約4万円に設定した。 広々としたオープンデッキが目を引くトレーラーハウスは1棟貸しで、最大8人が宿泊できる。トレーラーハウスを活用した地域活性化に取り組むエリアノ(東京)や、電源開発(Jパワー)などと連携して開業。旅先に滞在して仕事をするワーケーションが浸透する中、都市部の企業が研修場所にするといった活用方法を想定する。 以前から法人需要の開拓を考えていたという村上さん。「地方で仕事をするハードルを下げる機会になれば」と話す。瀬戸内の豊かな自然に触れるのを機に、交流人口の増加や移住促進にもつなげたいとする。
「しまなみには楽しみ方が豊富にあるからこそ長期滞在を勧めたい」と村上さん。地元住民らと連携して手がける体験プログラムも多く、利用が伸びれば地域経済への波及効果も大きくなる。観光資源を掘り起こし「世界に魅力を発信したい」と意気込んでいる。