パンダジャーナリスト中川美帆コラム「シャンシャン、中国の雅安碧峰峡基地へ到着」
上野動物園の職員とは24日にお別れしたシャンシャン
上野動物園の職員2人は24日にシャンシャンとお別れした後、同じ四川省にあるCCRCGPの都江堰(とこうえん)基地を訪問。2017年6月のシャンシャン誕生時に来日して、一緒にお世話してくれた専門家にシャンシャンの中国到着を伝えました。 2人が雅安碧峰峡基地に滞在したのは正味3日間ほど。意外と短いと思われるかもしれませんが、滞在してもシャンシャンを飼育できません。また、これは上野動物園に限ったことではなく、例えば、マレーシアで生まれた雌のヌアンヌアン(暖暖)が2017年11月に都江堰基地へ旅立った際も同様でした。同行した獣医師のMat Naimさんは「私は3日間だけ都江堰に滞在しました。マレーシアに戻った後、ヌアンヌアンの様子について頻繁に報告を受けています」と当時、筆者の取材に答えてくれました。 上野動物園の職員2人は2月25日朝、成都を発ち、午後2時30分ごろ成田空港に着きました。行きは順豊航空のチャーター便の貨物機でしたが、帰りは四川航空の旅客機です。日本と成都を結ぶ直行便の旅客機は、コロナ禍で全て運休した後、四川航空だけが昨年8月に運航を再開。週1往復、土曜日のみ運航しています。
跡地に動物園ホールの建設構想
シャンシャンが暮らしていた東園のパンダ舎は、いずれ取り壊される見通しです。跡地には「動物園ホール」を建設する構想があります。動物園ホールは、西園にかつて存在していましたが、現在はありません。 上野でパンダがいるのは、シャンシャンの両親と弟妹の計4頭が暮らす西園パンダ舎だけになりました。この場所は最近、改修しました。図の「屋外放飼場A、B」を隔てるガラス製の壁に、パンダが出入りできる扉を設置したのです。これは将来の繁殖も視野に入れた対応です。 改修で「屋外放飼場A、B」を使えない1月31日~2月26日の間、シンシンと双子の計3頭は、図の「室内展示2、3号室」のみで公開されました。「屋外放飼場C」は深いモート(溝)などがあり、「安心して使うには一定の時間の練習が必要」(上野動物園)、かといって「屋外放飼場D」は、大人のシンシンを含む3頭が過ごすには狭すぎるためです。 さらに、双子は近い将来、親離れします。親離れ後は、「室内展示3号室」と「屋外放飼場D」で暮らす予定のため、「母子分離の前に、母子を一緒に移動させて、空間に慣れさせるという目的もあります」(同)。 シンシンは過去、2~3月に交尾しています。シャンシャンを生んだ2017年は2月27日に交尾しました。今年は2月下旬時点で子育て中なので発情せず、繁殖は難しそうですが、来年以降に再び繁殖すれば、シャンシャンの弟妹はさらに増えます。 すくすく育ち、立派に中国へ旅立った「長女」のシャンシャン。新たな生活を応援したいと思います。
中川 美帆