「ニュースをTikTokで観る」動画隆盛の時代の〝テキストの役割〟とは テレビ制作者が文章を書く理由
動画隆盛の時代、若年層を中心に、いわゆるショート動画でニュースをチェックする人も増えています。テレビ局で番組制作に取り組みながら、デジタルでのテキストコンテンツの発信にも注力してきた足立義則さんは変化する現状を、「この10年の知見を次に生かせるか、メディア業界にとって最後のタイミング」と語ります。今のメディア環境において、テキストメディアが果たす役割をたずねました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎) 【画像】「TikTokでニュース視聴」どういうこと? アカウントの例 <プロフィール>足立義則(あだち よしのり)1968年生まれ。慶應義塾大学出身。1992年のNHK入局から社会部や科学文化部などでIT取材のほか事件事故、災害、文化福祉など幅広く取材と番組制作にあたる。2012年から報道のデジタル発信を担当し、ウェブコンテンツ制作やSNSの報道活用、偽誤情報対策も。現在はNHKのデジタル戦略検討や生成AI活用にもあたる。
他メディアでしていない、役立つことを
――足立さんはNHKの中で長らくデジタル発信に携わっています。これまでどんな取り組みをしてきましたか? デジタル発信に関わり始めたのは2012年、NHKもネット発信に力を入れようと、当時ネット報道部というものができて、それからですね。 最近では2022年から、さまざまな障害のある人たちが選挙の情報にアクセスしやすくする、選挙のユニバーサル化を目的にした「みんなの選挙」というキャンペーンを立ち上げ、サイト制作を担当しています。 他にも最高裁判所国民審査のサイトを制作したり、ARやVRといった技術で「報道の立体化」に取り組んだり、現在は別のサイトで続けていますが、noteで取材の内幕を伝える「NHK取材ノート」を立ち上げたり。古くは風疹の社会的問題を伝えるために2013年から今も続けている「ストップ風疹」キャンペーンなどを手がけてきました。 他のメディアがあまり取り組まないもので、世の中の役に立つと思ったテーマを中心に、メインとなる放送だけではできないようなデジタルを活用した発信に取り組んで今に至ります。 ――足立さんはネット上の話題やコンテンツをどのようにチェックしているのでしょうか。 どうしても興味関心の軸が報道にあるので、ニュースサイトやアカウントはチェックしています。最近だとタイトルの付け方が上手なビジネス系のニュースサイトをよくタイムラインで見るので、自分たちの参考にもしていますね。 Togetterやはてブ(はてなブックマーク)といった、ネットの話題をまとめるサービスを利用しつつ、Xでは気になるアカウントをリストにまとめて投稿をチェックしたりしています。このあたりは、ウェブメディアで仕事をされている方と変わらないでしょうね。 ――この10年のウェブメディア業界を振り返って、どんな出来事が印象に残っていますか? やっぱり、2010年代前半にBuzzFeedやThe Huffington Post(現HuffPost)という、世界的なメディアが国内に、黒船のようにやって来た、というのが印象的でしたね。一方で、あれだけ先進的な取り組みをしていたBuzzFeedがニュース部門を閉鎖し、国内でHuffPostと統合したというのは、時代の節目と感じました。 日本だけじゃなく海外でも「ニュースで稼ぐ、メディアを存続させていく」というのはなかなか難しい、ならどうすればいいのか――という議論の方向性を決定づけた出来事だと思います。