<高校野球>0.1秒でも速く…機動力自慢の城東、目指すは「野球研究部」 21世紀枠候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から四国・城東(徳島)を紹介する。【藤田健志】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 徳島市の吉野川河川敷にある同市民吉野川運動広場。城東の選手4、5人は練習開始前、硬式野球場を1周して清掃活動を行う。 同校は女子校として1902年に創立され、作家の瀬戸内寂聴さん(97)らを輩出したが、硬式野球部創部は96年。94年に入学した男子生徒の1人が発足を当時の校長に直訴し、その熱意を受けた徳島県や徳島市が協力して同運動広場を練習場として提供した経緯がある。西田琢真主将(2年)は「使わせてもらっているのできれいな状態を保っていきたい」と説明する。 同校は現役卒業生の6割以上が国公立大に進む県内有数の進学校で、塾に通う選手もいるため、野球部の平日の練習時間は長くても約2時間半。学校から約1.5キロ離れた同運動広場は照明設備がないため、冬場は縦60メートル、横90メートルの校内グラウンドを他の五つの部と共有する。常時使えるのは内野部分程度だ。 思うように打撃練習ができない中で、鎌田啓幸監督(49)は「足が遅くても選手18人全員ができることがある」と考え、チームとして走塁に力を入れる。初出場した昨秋の四国大会では1勝し、2試合で計8盗塁と機動力を生かした。 ウオーミングアップを兼ねたダッシュでは、投手役をつけて一、二塁のけん制球なども想定し、癖を探しながら走るタイミングを計る。ベースランニングではダイヤモンドに白線で描いた弧に沿って何度も走り、体を傾ける角度を身に覚えさせ、0.1秒でも速く走ることを意識する。 走塁以外でも実戦を想定した練習を行う。試合でボール交換されてもいい投球ができるように、ブルペンでの投球練習は複数の球を使用。鎌田監督は「短い練習の中でも野球を突き詰めていく『野球研究部』を目指している」と明かす。 初の21世紀枠候補校選出に西田主将は「甲子園が手に届くところまで来ているが、全国レベルでも通用する野球をしたい」と目標を掲げる。考える野球を深めながら、春の便りを待ちわびている。