宮沢りえ × 佐藤二朗 中村佳穂の楽曲から着想を得た舞台「そのいのち」で表現する“生命への讃歌”
――負を力にする、という話がありましたが、それがこのお芝居でどんな風に描かれているのか、演技を通じてどんな風に伝わるのかが楽しみです。
佐藤:負を力にする、というのは、負を違うものに変換するということではなくて、負は負のままあるんです。それがどこかにいっちゃうわけでもないし、良いものになるわけでもない。今日や昨日と同じように、明日も負はそこにあるんだけど、負があるからこそ良いこともあるんじゃないかと思っていて。負は相変わらずあるけれど、それでも半歩、前を向こうと思えるようになるのが人間らしい感じがして、そういう物語を書きたいといつも思っているんです。
――ちょっとしたことで気持ちが変化することってありますね。そうすることで負との向き合い方が少し変わったりする。
佐藤:そう。すごく些細なことでいいんです。例えば雨が降っている中を傘をさして歩いていて、ふと思い立って傘をたたんで、ずぶ濡れになって家まで走って帰ってみる。そうすることで、なんだか分からないけど「頑張ってみようかな」っていう気持ちになったりすることに僕はすごく人間の面白さを感じるんですよ。
宮沢:登場人物それぞれから剝(む)き出しになって出てくるものが、どこにどんなふうに届くのかは舞台を見る人によって違ってくると思うんですよね。私は脚本を読んだ時に、鳥肌が立った瞬間があったんです。舞台を観にきてくださった方にも、そういう瞬間があればいいなって思います。
PHOTOS:TAMEKI OSHIRO STYLIST:[RIE MIYAZAWA]KEIKO SASAKI (AGENCE HIRATA)、[JIRO SATO]MIYOKO ONIZUKA(Ange) HAIR & MAKEUP:[RIE MIYAZAWA]KEIZO KURODA(Iris)、[JIRO SATO]AKI KONNO (A.m Lab)
[JIRO SATO]・ジャケット 10万4500円、シャツ 11万円、パンツ 7万1500円/全てY's for men(ワイズプレスルーム 03-5463-1500)